電車に乗っていたら、若い男女が都知事選の話をしていた。
2人とも都知事選に投票するのは初めてのようで、女性はあまり知識がないようだった。大阪の住民投票とは違うのか?みたいなことも言っていて男性が説明するのだが、途中からスマホで調べ始める。段々と話はそれなりに盛り上がっていくわけで、「ものごとを知る過程」を生で見たのは面白かった。
今回の選挙戦は、過去に比べて相当な激戦になりそうだ。保守系分裂が最大の理由だが、こういう場合は党の推した候補が苦杯を舐めることが多い。そして過去を振り返ると、石原信雄や明石康という官僚出身者も、磯村尚徳というニュースキャスターも敗れている。
この辺り、今回はどうなるのか。いずれにせよ、日本の選挙の中でも、相当特異だと思う。
そして、東京都民の特徴として「ネット好き」ということがあって、これが今回の結果に相当影響すると僕は思う。
ヤフーが今春に発表した調査が話題になった。
「日本は2つの国からできている」というタイトルで、検索における東京の特異性を明らかにしたのだ。
クルマよりもタクシーに関する検索が多く、「中学受験」や「フィンテック」に関する検索もやたらと多い。
それはなるほど、と思うのだけれど、個人的に驚いたのはそもそもの検索回数だ。都道府県別に人口当たりの検索数を見るとダントツに多い。東京を100とした指数で、次点の大阪は2/3にも満たない。隣の神奈川は半分程度である。 >> ネットと都民をなめてはいけない理由。の続きを読む
都知事選の最初の記憶は、1971年だ。小学校2年になる頃なのになぜ覚えているかというと、選挙戦が派手なイメージ選挙だったからだ。美濃部陣営は「青空バッジ」をシンボルにしていて、たしか対抗馬の秦野章も他のデザインのバッジを配ったように思う。
この辺りは、たしか「三色バッジ」だったか少々記憶が怪しいのだが、いまにして思うと米国大統領選のようなやり方を日本の選挙に持ち込んだ初めてのケースだと思う。
続く75年はよく覚えているが、石原慎太郎が挑んで敗れた。この辺りの経緯は沢木耕太郎の「馬車は走る」で後に読むことになる。
中学校の卒業式の頃が次の都知事選で、鈴木俊一という、とても地味な人が出ていて、何だかつまらなかった感じがしたことも覚えている。
こうやって都知事選を、その投票率とともに振り返ってみると、幾つかのことがわかる。
まず、出馬した現職が敗れるということはない。
毎回派手な騒ぎになるけれど、一度なった知事は強い。その結果、再選されれば三期以上務めている
そして、何だかんだいって保守が強い。
1995年の青島幸男の当選がまだ記憶にあると、「何かが起きる」というイメージがあるかもしれないが、意外と「普通の選挙」なのである。
また投票率を見ると、50%を挟んでうろうろしている。青島知事の時も「無党派が動いた」というより、低投票率の中で相対的に勝ったような感じだ。前回は衆院選に重なったので例外的だと思う
つまり、メディアの騒ぎが先行する割に都民は結構覚めている。今回など、「投票したい」という他道府県の人も多いだろうし、そういう人から見ると「棄権なんてもったいない」と思うかもしれないが、まあ、それが東京人なのだ。
このあたりは、東京都民の妙なインサイトがあると思う。