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71Xomp30ypL._SL1500_[読んだ本] アルトゥール・ショーペンハウアー著) 鈴木芳子(訳) 『読書について』 光文社古典新訳文庫
読むこと自体はそうそう難しくないけれど、どう感じるかとなると、なかなかに手強いのがこの一冊。

『読書について』は、ショーペンハウアーの『余録と補遺』から訳出された三篇からなっているが、書物と人間の知性をめぐる鋭い問いかけが読み継がれている理由だろう。

『読書は自分で考えることの代わりにしかならない。自分の思索の手綱を他人にゆだねることだ』(p.11)

まあ、過去の本を読むより自分の頭で考えろという話なんだけれど、これはまた都合よく解釈されやすい。「オリジナルだけに意味がある」と創作に燃えて、過去の作品を勉強することを嫌がるアーチスト志望の人などには有難いようだが、うかつに信じれば、そこには大きな落とし穴がありそうだ。

ふと思い出すのは、中学校の時に「大切なのは未来なんだから歴史のような過去のことを学ぶのは意味がない」と言っていた同期生がいたことだった。単なる勉強嫌いならともかく、相当成績がよかったので、まあ典型的な中二病だったのだろう。

ちょっと考えればわかることだが、「読書をする」ということが、「自分の頭で考える」ことを邪魔するわけではない。知識が、そのまま創造力を妨げるわけではない。

歴史に学ばない人が、失敗を繰り返していることを見ても明らかだ。

しかし、ショーペンハウアーの言葉がどこか僕たちの「痛いところ」を突いているからこそ、読み継がれているのだと思う。

それは、この時代がある種の「情報爆発」が起きていたことと関係があると思っている。 >> 【歳末本祭り】ショーペンハウアーの仕掛けたトラップ『読書について』の続きを読む