もちろん冷静な意見も多いとはいえ、「自粛」のムードが広がっている。単に「不謹慎」という精神論だけではなく、今回は「電力節減」という物理的な大義名分ができつつあるのでややこしい。
しかし、この節電という名分も怪しいものがある。東京ドームのナイターは6000世帯分の1日分の電力だという。「その程度で済むのか」と思った。
そもそも5万人くらい来るのだから、おそらく万単位の世帯が不在になる時間ができる。一箇所に人が集まる方が効率はいいのではないか?
そう、結局節電も精神論になりつつある。合理的に考えないで象徴的なイベントにしわ寄せがいく。プロ野球も両リーグにコミッショナー、そして選手会がそれなりに考えていたのに、文部科学省や政治家が入ってきてややこしくなった。
とにかく「エンタメ狩り」を止めた方がいい。日本、特に首都圏はサービス業の割合が高いし、エンタテインメント産業にかかわる人も多い。多額の義捐金を寄付できる有名なスポーツ選手やアーチストはごく一部だ。災害時に「不謹慎」で止められてしまうような仕事にかかわる人の裾野はかなり広い。外食だってそうだし、流通も同じだ。
実は「不要不急」の行動が、多くの人の仕事になっているのだ。
「人を楽しませる仕事」を支える無数の人々の仕事を奪ってしまうことは、本末転倒だ。日本では、そうしたエンタテインメントの仕事にかかわる人が増えた。それは日本がずっと平和だったからだ。
こんなことが続いたら、「喜怒哀楽」ではなく、「怒哀」だけの社会になる。それがいかに恐ろしいかは、誰だってわかるはずである。
■将来の電力供給も含めてリポート「震災後の生活と新たな機会」を書いた。こちらからお読みいただけます。