2013年11月18日 東京文化会館
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団演奏会
ワーヘナール : 序曲「じゃじゃ馬ならし」 op.25
ストラヴィンスキー : バレエ「火の鳥」組曲 (1919年版)
チャイコフスキー : 交響曲第5番 ホ短調 op.64
〈アンコール〉
チャイコフスキー: バレエ「眠りの森の美女」から パノラマ
指揮:マリス・ヤンソンス
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
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演奏前に報道のカメラが二階正面にカメラを向けていた。最前列が空いていたのだが、やはり、というか皇太子ご夫妻が入られる。さすが、オランダ王立オケ。
で、お迎えしての一曲目が「じゃじゃ馬ならし」…というのは、もう何といえばいいんだろうか。まあ、R.シュトラウスを連想させる軽やかな曲でさらりと。
続いての「火の鳥」は、凝縮された音楽と卓越した管楽器を楽しむことができた。東京文化の、幾分乾いた響きが木管の巧みさをいっそう印象付けている。
そして、休憩を挟んでのチャイコフスキーに。
5番のシンフォニーは、アマチュア・オーケストラが演奏して「成功確度の高いシンフォニー」のトップクラスだと思う。(ただしファーストホルンが吹ければ)つまり、少々青臭いところがあって、フィナーレのコーダは、普通に演奏できれば普通以上に受ける。
逆に言うと、プロフェッショナルが取り上げるには意外と難しい面がある。熱くなれば、「そこまでやらなくても」という感じになるし、サラリとやると不満が残る。
ヤンソンスは毎年のように聴いているが、やはりロシア系の作曲だと「スイッチが入る」ことがあるので、今回はこのプログラムを選んだ。
2013年11月5日 サントリーホール
パリ管弦楽団 演奏会
シベリウス: 組曲『カレリア』 op.11
リスト: ピアノ協奏曲第2番 イ長調 S125
〈アンコール〉
ラヴェル :『クープランの墓』から「メヌエット」
サン=サーンス: 交響曲第3番 ハ短調 op.78 「オルガン付」
〈アンコール〉
ビゼー:管弦楽のための小組曲op.22『子供の遊び』より「ギャロップ」
ベルリオーズ:『ファウストの劫罰』より「ハンガリー行進曲」
ビゼー:オペラ『カルメン』序曲
ピアノ:ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ
オルガン:ティエリー・エスケシュ
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
パリ管弦楽団
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パリ管を聴いたのがいつ以来だったのか、なかなか思い出せない。確実に記憶しているのは1985年にパリで聴いたことだ。バレンボイムのスクリャービンで、まだ僕は大学生だった。
おそらく、それ以来だと思う。つまり、「ほぼ初めて」ということだろうか。フランス放送響は幾たびか聴いているのだけど、パリ管はなぜか縁がなかった。
一曲目から少々驚いたんだけど、ヤルヴィという人は本当に律儀だ。カレリアが、あまりに立派で、堂々としていることに少々驚いた。
かなり、ズッシリした前菜。しかし、ソースはくどくない。このコンビ、どうやら絵にかいたようなフレンチ・テイストではなさそうだ。
リストは、ピアノが精妙だけど軽やか。チェロのソロとのアンサンブルは、本当に印象的だった。2番のコンチェルトを聴く機会は少ないが、重すぎず、まとまりもあって、もちろん華やか。この日の演奏の中で、ある意味もっともフランスらしさを感じたようにも思う。
そして、サン=サーンス。
こういってしまうと身も蓋もないけれど、この曲はプロフェッショナルが真っ当に演奏すれば、必ず盛り上がるようにできている。だから、聴き終ってしばらくするとフィナーレの印象ばかりが記憶に残ることが多い。
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バイエルン放送交響楽団 演奏会
2012年11月27日 サントリーホール
ベートーヴェン 交響曲第1番 ハ長調
ベートーヴェン 交響曲第2番 ニ長調
ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調
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ここ数年ヤンソンスの来日公演は必ずのように行っている。技術的には卓越しているが、どこか「寸止め」感のあるコンセルトヘボウと、深みのあるサウンドとパッションがありつつ金管などのアンサンブルに傷のあるバイエルン。
ただし、いずれにせよ「次回も聴きたい」となるのは、ヤンソンスの人徳なのだろうか。
今回は、ベートーヴェン全曲チクルス。となると、滅多に聞けないということで、まず9番を選択。これは次の土曜日。
そして、意外とチケットがあったので、これも来日オケではあまり聴けない5番。座席はLAブロックの最前列。オケが対向配置で、コントラバスの背中を見るシートだった。
そして、今回も、「なぜそこで」というような傷があったけれども、おそらくそれを気にした人は殆どいなかったのではないだろうか。
なぜかというと、圧倒的に「ベートーヴェンの音楽」を堪能できたから。クラシックの素晴らしいコンサートでは、結局作曲家の想いがクッキリと浮き上がってくる。そして、とりわけ第5番のいい演奏を生で聴くと「あっという間に終わる」のだ。
特に3楽章からフィナーレに入る辺りを聴くと、ベートーヴェンがこれを書いた時はさぞかし楽しかったのではないかと、想像してしまう。
「フフフ、このまま切れ目なしにいきなりファンファーレ鳴ったら、驚くだろうな~」みたいな感じ。「エエイ、トロンボーン入れちゃえ」「ピッコロも面白いぞ」「もう一度、ダダダンでテーマ書いて、と」。だから、密度が濃い。
これが9番あたりになると、本人の間でもかなり収拾がつかなくなっていて、それはそれで面白いんだけど、5番の密度はすごい。
敢えて言えば、この夜は何と言っても、ベートーヴェンを聴く夜で、ついでオーケストラ、指揮者が順々に後景に存在しているという印象。
それが、いいんだよな。と最近は思うようになった。
1番、2番も印象はまったく同じだけれど、それぞれ緩徐楽章にハッとする響きを感じた。ちなみに前半の2曲は第一バイオリン12人の、いわゆる「12型」だったが、5番は「16型」。つまりコントラバスは2倍になるわけで、この辺りも含めてベートーヴェンの「化け方」を堪能するコンサートだった気もする。3番の編成はどうしたんだろうか。
というわけで、土曜日もかなり楽しみになってきた。