休み明けは、フォルクスワーゲンのスキャンダルで大騒ぎになっている。将来の危機管理のテキストにはどのように扱われるのか。そのせいか東芝の問題は相対的に軽量に見られるかもしれないけれど、連休中に読み直していた記事で面白いものがあった。
日経ビジネスオンラインの「大西康之・突撃!ニュースの現場」というシリーズで、記者会見の模様などを丁寧に再現している。記者会見の記事は多いが、その場の空気を伝えるくれる記事は少ないので、本質が垣間見えることもある。
ちょっと前の9月14日の記事で、東芝決算発表の時の話である。室町社長の説明の後で説明された渡辺幸一財務部長の発言が、なかなかすごい。記事によるとこんな感じだ。
「STP(米国での原発建設プロジェクト)の減損がなかりせば増益です」
「電子デバイス部門も、減損処理がなかりせば、営業増益でありました」
この、「なかりせば」という大時代な言葉も何やら可笑しいが、そもそも、これは責任ある立場の人が言っちゃいけないんじゃないだろうか。
だって、言葉が大仰だけどいわゆる「たら・れば」なんじゃないかと。「ああ、あれさえなければ」と、つまり過去を「なかったこと」にしちゃうわけだ。じゃあ、こういう言葉を使うのはどんな時なんだろう。
まず、スポーツファンなどはこれをよく言う。「あのキックが決まっていれば」「あのレッドカードさえなかったら」とかいう類のものだ。まあ、これは仕方ない。ファンはそうやって、ウジウジしながら慰め合って、勝利の時はその鬱憤を晴らす。
ところが、これを監督が言ったらどうなるか。
「あのホームランさえ打たれなければ、勝ってた試合です」 >> 東芝財務部長の言語感覚。の続きを読む