都市伝説の類で真偽を確かめたわけではないが、かつて英国小説の訳でこんな感じの一文があったという。
「彼はレコードに針をおろして、“ジョンの情熱”のメロディーに耳を傾けた」
さて、“ジョンの情熱”というポップスはあるかもしれないが、どうも怪しい。実はバッハの「ヨハネ受難曲」だったというのがオチなのだ。ヨハネ受難曲はJohn Passion、受難曲は英語でpassionとなる。そんなタイトルの映画もあったと思うが、まさにキリストの受難と磔刑を描いていたはずだ。
どうして、passionにそういう意味があるのか?というのを調べるといろいろ出てくるだが、結構複雑なのでここでは細かく触れない。
ちなみに、今は復活祭(イースター)に向けた四旬節の真っただ中だ。四旬は40日だが、日曜を除くので実際は46日間。復活祭は春分の日以降の、最初の満月の次の日曜日なので、今年は3月27日。
受難曲はこの季節に演奏会が開かれることが多い。そして、取り上げられるのは「マタイ受難曲」だ。ただし、ついつい聴く機会を逸する。年末の第九のように、あちらこちらでやってるわけではない。日本では年度末の時期にあたるし、気がつくと「ああ、終わってた」ということになる。今年は行く予定だが。
マタイ受難曲は、マタイによる福音書を題材している。ものすごく大雑把にいうと、聖書の言葉に曲をつけて、適宜加筆しながら全体を構成したものということになる。最後の晩餐、ユダの裏切り、ペテロの否認と有名なシーンが続く。
こう書くとわかりやすそうに見えるが、なんといっても題材が受難だ。聴く方にも、それなりのエネルギーがいることはたしかだ。
ただ、ふとしたきっかけでつき合い方が変わった。 >> 【音の話】復活祭までの四旬節に、マタイ受難曲。の続きを読む