【書評】ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること
ニコラス・G・カー 篠儀直子訳
青土社
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「この本はネットを糾弾し、ネット以前の世界へ戻ることを推進する本ではないかという性急な推測が、タイトルだけを見た時点ではなされがちであるかもしれない。」
訳者あとがきで、このようなことを書かねばならないこと自体、この邦題は訳者にとって不本意だったのかもしれない。
この本のベースになった論文が”Is Google Making Us Stupid?”であり、これはまさに「グーグルでわれわれはバカになりつつあるのか」という感じではある。しかし、この本の原題は”THE SHALLOWS”だ。「浅瀬」という意味から転じて、「浅薄な」という意味合いの言葉だ。
タイトルの原題のことを長々書いても仕方ないと思うが、どうしても「ネット・バカ」という邦題で誤解されているような気もする。この本は。決してネットを糾弾するほんではないし、単純なメディア論でもない。
人は情報からどのような影響を受けてきたのか。その影響は、メディアの形態によってどう変わるのか?ということを問いかけている本である。
インターネットが人の思考自体を変えてしまうのか?というこの本の問いかけ自体は、自然なもののようであるが、あまり正面切って論じられてなかった。しかし、それを考えるのに「紙の本とウェブ」のような比較論自体が実は「浅薄」であることを、この本は教えてくれる。