それにしても「なぜ弱者を大切にするべきか」という理由をわかりやすく説明することは難しい。少なくても、「優しくしましょう」という情緒的な説得だけでは限界がある。

ただ、「弱者の視点で考える」ということは、相当に合理的だと思うので、ちょっと書き留めておきたい。

会社員時代に新人教育を3年間ほど担当したことがあった。その時にアタマの中でこういうコンセプトを持っていた。

「新人は会社の中で最も弱者なのだから、最大の資源を投入するべき」という考え方だ。

これは、実際にはほとんど口にしなかった。説明し始めると結構難しいのだけれど、学生時代にロールズなどの社会正義論を学んだこともあったので、自分なりに前からやってみたかったのだ。

結論的にいうと、この発想は正しかった。

何かの講義で、新人が「わかりにくい」というのは、よく研究すると話し手に問題がある。新人は知識面では最弱者だが、彼らに分かりやすく話せる人は外にいってもプレゼンテーションがうまい。

また、配属後に新人が行き詰ったりするときも、彼らが最弱者であると仮定すると、その組織の問題がよく見える。いろいろとうまくいってない組織は、いきおい新人にしわ寄せが行く。

つまり、弱者を基準に環境を最適化することは、全体にとっても最適化をしていくことになるのだ。 >> 弱者を大切にするのは合理的だと思う。の続きを読む



電車に乗っていたら、若い男女が都知事選の話をしていた。

2人とも都知事選に投票するのは初めてのようで、女性はあまり知識がないようだった。大阪の住民投票とは違うのか?みたいなことも言っていて男性が説明するのだが、途中からスマホで調べ始める。段々と話はそれなりに盛り上がっていくわけで、「ものごとを知る過程」を生で見たのは面白かった。

今回の選挙戦は、過去に比べて相当な激戦になりそうだ。保守系分裂が最大の理由だが、こういう場合は党の推した候補が苦杯を舐めることが多い。そして過去を振り返ると、石原信雄や明石康という官僚出身者も、磯村尚徳というニュースキャスターも敗れている。

この辺り、今回はどうなるのか。いずれにせよ、日本の選挙の中でも、相当特異だと思う。

そして、東京都民の特徴として「ネット好き」ということがあって、これが今回の結果に相当影響すると僕は思う。

ヤフーが今春に発表した調査が話題になった。

「日本は2つの国からできている」というタイトルで、検索における東京の特異性を明らかにしたのだ。

クルマよりもタクシーに関する検索が多く、「中学受験」や「フィンテック」に関する検索もやたらと多い。

それはなるほど、と思うのだけれど、個人的に驚いたのはそもそもの検索回数だ。都道府県別に人口当たりの検索数を見るとダントツに多い。東京を100とした指数で、次点の大阪は2/3にも満たない。隣の神奈川は半分程度である。 >> ネットと都民をなめてはいけない理由。の続きを読む



41Kxg85xZJLまだ報道の段階ではあるけれど、天皇が退位の意向を示されたという。手続き的には皇室典範の改正になるが、いわゆる「譲位」についての規定を決めるのは相当難しいかもしれない。

明治以降は譲位を想定していないのだが、それは政治的な恣意性を避けるためと言われている。

江戸時代は、徳川幕府と朝廷の間にさまざまな駆け引きがあった。幕府の意向、つまり時の実質的政治権力が天皇の即位に影響を及ぼすこともあったわけだ。

そんな古い話を、と思われるかもしれないが現在の典範の規定は歴史的な教訓を含んでいると考えていいのだろう。

江戸時代の朝幕関係で、もっともドラマチックなケースは、後水尾天皇を巡る話だろう。徳川家は二代将軍秀忠の末娘和子を入内させて、天皇家の外戚となることを目論む。

ところが朝廷への監視を強める幕府との間にトラブルが絶えず、婚儀の9年後に後水尾天皇は退位する。この辺り「紫衣事件」などが特に有名だ。

その後9代の天皇の退位理由を見ると、7人が譲位でしかも20代から30代の間におこなわれており、即位した天皇は20歳以下だ。このような運用が実際におこなわれていたことになる。 >> 天皇、徳川家、光琳、そして金銀の行方など。の続きを読む



選挙の前になると、「首相動静」とかが慌ただしい。あちらこちらで演説をして、飛び回っている。「へえ、こんなとこで昼飯食べるんだ」とか、妙なところに目が行くこともあるけれど、今回の選挙で気になったのは「練り歩き」だ。

とにかく、毎日のように「応援演説をしては練り歩き」というパターンだ。

記事検索で「練り歩き」と調べれば、その数の多さが分かる。2014年総選挙の期間で検索したら1回だけだったので、今回は相当練り歩いているのだ。

警備の人は大変だと思うが、この練り歩きはソーシャルメディアを相当意識しているんじゃないかと思っている。

支持するかしないかはともかく、首相が地元商店街を歩いていればカメラ、というかスマートフォンや携帯電話を向ける。そして、ついつい発信する。実際twitterを「(訪れた)地名 首相」で検索すると、結構な数が出てくるのだ。

街頭演説でいくら集まっても、国政選挙はメディアで決まっていくという面はたしかにある。ただし、地方だと首相などの来訪自体がニュースになるし、一定の効果はあるはずだ。ただ、都市部だとそうはいかない。演説がすぐには効かない。だとすれば「撮って拡散したくなる」状態をつくるのは、たしかにうまいやり方だと思う。 >> 演説よりも「練り歩き+拡散」になった選挙戦。の続きを読む



参院選の投票日が明日になった。憂うつといっても、別に行きたくないとか、面倒くさいとか、そういうわけではない。

ここ何回かの選挙では、投票日が近づくにつれてSNSへの書き込みにも政治的なものが増える。自分の知人が、政治的な意見を述べるのを目にすることが多くなるわけだ。

ただ、恐ろしいことに、政治的発言というのは、その人の理性のありようを露骨に見せてしまう。

自分の嫌いな政党を攻撃するようなサイトを、片っ端からシェアしまくっているような人もいる。それも、自分のコメントがなく「無言でシェア」という感じだ。大概、自分よりも相当年上だ。

なんだか不気味な感じがするので、まあ、そっとフォローを外すことになる。

そして、選挙戦が追い込みになると、怪しい情報が飛び交う。

デマのようなものや陰謀史観とか、そういうのを無邪気にシェアしていて、それが教育に携わる仕事をしている人だったりもする。

つまり、選挙前のSNSはその人の >> 投票日前日、少し憂うつな理由。の続きを読む