そろそろ各社が内定を出している。学生から報告が来るだ。
青山学院では2006年から教えていた。この時の1年生が今年卒業したのだが、僕に相談に来た学生はいい結果を出している。相談に来た、というより「飲みに行きたい」と声をかけてきたような感じで、そのまま付き合いがあったような連中である。
その中で、短期留学をしたために1年卒業が遅くなった学生がいたのだが、彼も一昨日第一志望の企業から内定をとった。誰もが知っている世界的メーカーだが、今年の採用者数はかなり少ない。正直驚きつつもうれしかった。
今年は自宅近くのバーで会った学生の就活の面倒もみた。1人で飲んでいたら、話しかけられたのでそのまま相談に乗った。いくつかエントリーシートを見たり、指導したんだけれど彼も少々前にかなりいい結果を出して、さらに相当の人気企業で最終に進もうとしている。
自分の周りにいる学生はそんな感じだが、彼らの周辺は「厳しい」という。それが全体の傾向なのかもしれないが、どうも力を出し切れていない学生も多い。
では、どうして僕の周辺では結果が出ているのか。
傾向は単純だ。みんな、自ら僕にコンタクトしているのである。ホームページからのメールはオープンなので、「会いたい」といえばできる限り会う。バーで話しかけてくれば、どうにかしようかなと思う。
みんな自分で道を開いている。そういう学生が結果を出す、というのはいい傾向だし。やはり企業はよく見ている。
あと、もう1つ。彼らは就活中に企業に対して文句をいわない。妙に情報が多くなっているのか、企業側の姿勢をブツブツ言っている学生も多いようだ。そして、そういう学生に限って、自分勝手な学歴コンプレックスを持っていて「うちの大学ではエントリーしてもダメだから」とか言っている。そして仲間が結果を出してから、過ちを知る。
「自主的」「積極的」「人のせいにしない」書いてみると当たり前だけど、これは社会人としてのもっとも重要な要件であって、昔から変わらない。
僕も新卒一括採用の偏重には否定的な意見を持っているし、就活の早期化も弊害が多いと思っている。かといって学生におもねるような改革は必要ない。
つまり20歳を過ぎたら、自ら「ちゃんとしたやつ」になるべきなのだ。就活の原則は常に単純である。
就職戦線も山場を迎えたようで、学生からも内定報告が入るようになった。
決まったという話はうれしいのだが、この頃に多いのが「断り方」に関する話で、聞いていると企業の浅ましさが浮き彫りになってくる。
傍から見れば、人気の高い一流企業でも、この時点になると企業の「柄」のようなものが見えてくるから面白い。学生も、それを敏感に感じ取る。つまり、内定出しの時点でドッシリ構えられない企業は、ブラックとまでは言わないまでも黒よりの灰色だったりする。
一番まっとうな企業は「内定です」としか言わない。「他は回らなくても結構です」くらいはいう。
企業によっては「他は断ってください」というらしい。まだ他を回りたい学生が「どうすればいいですか」と聞いた時には、「好きなだけ活動しなさい」という。
「他を断ったら内定を出す」とか言う話になってくると、話がややこしい。「ハイ断りました」と言っておいてコッソリ回ればいいだろう、というなら話はカンタン。ややこしいのは、この時点で学生が「こんな企業に入りたくない」と思い始めることなのだ。
「**では、その場で電話をかけて断らせる」という話も聞くが、これも都市伝説かもしれない。ただ、こういう企業って実際のビジネスでも「お行儀が悪い」と言われる会社だったりする。学生のカンは正しいのだ。「一度店に入ったら最後」のぼったくりバーと変わらない。
こういう品位の低い企業では、結局採用も「ノルマ」なのだ。ある程度の「優秀な」学生を予定通り採れました、と経営陣に報告することが人事部長の仕事。不況の時は「今年は少数精鋭です」となり、好景気なら「幅広い人材を確保しました」ということになる。
この手の内定間際のせめぎ合いは、僕が学生の頃から変わっていない。いくら人事制度をいじっても、根本的な何かがダメなままなのだと思う。