昨秋、萩に行った。細かく書くと、出雲から温泉津に回り、津和野から萩へ。その後山口市から、宇部へ抜けて帰ってきた。
天候に恵まれて楽しく過ごしたのだが、萩の町ではやっぱり「萩焼」が気になる。
焼き物にとりわけ関心があるわけでもないのだけれど、ついつい買ってしまうことも多い。西の方では、以前出雲の出西窯の工房に行った。そうだ、その頃はちょうど出雲大社が葺き替えだったので、今回はちょっとしたリターンマッチでもあったのだ。
ただし、何といっても萩焼だ。あちらこちらに店がある。良し悪しはわからないけど、まず城など観光の中心にあるような店で何となく相場をつかむ。ただし、ズラ~ッと並んでいるのを見るほど、どうすればいか分からない。
というわけで、今度は街なかを丁寧に歩いてみる。萩は昔ながらの街並みが残っていてそれが観光資源になっている。萩焼の店もあるのだけれど、今度はいろんな意味で手が出しにくい。
有名な先生の「作品」になってくるので、価格も高い。高くても自分の目に自信があればいいけれど、皆目見当もつかない。しゃれた店もあって、デザイン的にも大胆なものも扱われていて、なぜか、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」が店内に響いている。やはり、退散した方がいいような気になってしまう。
もうあきらめようかと思っていたのだが、前日クルマを走らせながら裏道の店を幾つか頭に入れていたので、そこを回っていくと「オッ?」と思う店があった。どことなく、佇まいが凛としている。とある窯の店なので、いろいろ並べている所とは空気感が違う。 >> 萩焼の茶碗、しかも「鬼萩」のご飯はおいしいよ。の続きを読む
角館を経由して、峰吉川という駅で降りて温泉宿に行く。翌日は秋田市まで行って、一気に東京まで帰るルートだ。
秋田市は、初めてだ。それほど時間があるわけでもなく、雪もちらついたので、一巡りして駅ビルの中できりたんぽを食べた。一人分の小鍋で出てくる。
久しぶりだが、当地では初めてだ。昼だったけど、地酒をもらってゆっくりした。
鶏のだしがしっかりしていて、うまい。
そして、ふと思った。
きりたんぽは、米からできている。そして、米の酒を飲む。十分に合うのだけれど、あまりこういう組み合わせはないんじゃないか。
というか、他にあるんだろうか。
米の飯に合うものは、たいがい日本酒にも合う。魚だって、定食にもなればつまみにもなる。焼き鳥だって、米の上にのせれば丼だ。
しかし、「日本酒と米の飯」は同時に口にすることはない。餅と酒もそうだ。もっとも「酒を飲みながら飯を食う」という人もいるだろう。
ただ、日本人の食文化の基本構造として、「酒と飯」は一緒にならないというのは、専門家も指摘している。石毛直道氏の『日本の食文化史』などに詳しい。
このあたり、聖書に出てくる「パンと葡萄酒」の関係とはちょっと違うわけだ。
ところが、「きりたんぽと酒」というのは、普通に成り立っている。違和感はない。というか、相当においしい。これを考えた秋田県人は「米どころの酒好き」ということなんだろう。 >> 米で米を飲む。きりたんぽって、すごい。の続きを読む
このくらいの季節から、段々とすっきりしたスピリッツが飲みたくなって、ジンにライムを絞って飲んだりしていたのだけど、ふとしたきっかけでウォッカにしてみた。
学生時代にはよくウォッカを飲んでいて、それは単に安かったからだと思う。ストロワヤとかだったけど、考えてみれば「ソ連」の酒だ。そして、最近は欧州の各地でウォッカがつくられていて、プレミアムウォッカと呼ばれるカテゴリーも生まれてきた。
そのきっかけというのは、『誘うブランド』という本を読んだことだ。ブランドを巡る心理面からのアプローチの本だが、冒頭に2つのウォッカのブランドについての消費者リサーチの話がある。
そこに出てくるのが、グレイグースとケテルワンというウォッカ。読んでいるうちに飲みたくなり、ちょっと迷ってグレイグースを選んだ。
昔に、というか現在でも飲める普通のウォッカとは全く違う。酒として、というより液体としての完成度が高い。ストレートで、そのまま口に含んだ時のまろやかさに驚く。 >> プレミアムウォッカの危ないまろやかさ。グレイグースの続きを読む
それがいいのかどうかは分からないのだが、「悩みはあるのか?」と自問した場合、「特にはない」ということが続いていたような気がする。
会社を辞めようかどうか?ということを日々考えていたのは「悩み」といえば悩みであった気もする。ただ、いざ決めてしまえば「さあ、どうしようか?」ということを考えればいい。
そういうのは、あまり「悩み」という感じはしなくて、ただの問題解決シミュレーションだ。「どうやっていいのか分からない」となるというのが「悩み」だとすると、あまりそういう経験はないように思う。
ところが、昨年の秋頃は明らかに「悩み」があった。自宅のぬか床の調子がおかしくなり、強烈な異臭を放つようになったのだ。
自分でぬか床をつくりぬか漬けをつくるようになって3年が過ぎた。最初はamazonで売っている「鉄粉ぬか床」というのを買ってみた。少々塩分が強い気もするが、とりあえず味はまとまる。その後は、普通のぬかを買い足して自分なりに調整してきた。
いまの時期だと「みかんの皮」なども、柔らかな風味になる。 >> 死の床から復活した、ぬか床。の続きを読む
まったく行ったことのない所へ一人で行く。なんか、それだけで僕にとっては最大の娯楽なんだけど、これは結構得な性格かもしれない。特に名所とかなくても、知らないところへ行くだけでいいのだ。
そして「何もない」と地元の人が言うようなところでも何かはある。というわけで、ちょっと前のことだが遠州、つまり静岡の森町へ行った。
別にここを目指したわけではない。妻が愛知の実家に帰省したので、一日遅れてクルマで追っかけた。昨年は同じような企てで、信州の高遠から大鹿村の温泉へ投宿した。
今年は、新東名経由で行くので、森へは途中下車だ。
静岡県の森町と聞いてもピンとこないかもしれないが、「森の石松」の出身地だ。あの森、というのは地名である。森の中にいる人、ではなくて、それじゃオランウータンだ。
静岡というと海のイメージだが、この辺りを走っていると甲州のような感じだ。山間にある小國神社は「遠州一宮」でもあり、しっとりとした厳かさがある。
朝が早かったのだが、近くの蕎麦屋が開いていたので入る。天おろしが名物のようで、蕎麦も「それに合わせている」という。 >> 遠州で蕎麦をはしごする。の続きを読む