220-kabukiza11.png
2013年11月13日 歌舞伎座 夜の部

歌舞伎座新開場柿葺落 吉例顔見世大歌舞伎
「仮名手本忠臣蔵」
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場
     同   二つ玉の場
六段目 与市兵衛内勘平腹切の場
七段目 祇園一力茶屋の場
十一段目 高家表門討入りの場
     同 奥庭泉水の場
     同 炭部屋本懐の場
=======================================================
新しい歌舞伎座には先月初めて行ったのだけれど、やはり気になって今月も足を運んだ。今月から来月にかけて、二カ月にわたって「仮名手本忠臣蔵」というのは、25年ぶりだという。
この演目を見るのは、「平成中村座の5年ほど前の興行以来だ。
開演前に中村福助が体調不良で休演とのアナウンス。代役は芝雀となる。どうもあちこちに無理がかかっているようにみえる。だったら彼らを出せばいいのに、と思うのだが、まあ大人の世界にはいろいろあるようで。
菊五郎の勘平、吉右衛門の大星由良之助と、安定感は十分の舞台である。ただ、吉右衛門の声の通りがあまり良くなかったのが気がかりではある。
見終わってから感じたのは、この忠臣蔵というお話は果たしてこれからも日本人の中で「定番のお話」であり続けるのかな、ということだ。歌舞伎をはじめ、芝居や映画、ドラマで忠臣蔵ほど取り上げられたものはないだろう。
ただ、自分の中でも、既にこのストーリーへの共感性は薄い。刃傷沙汰を起こす塩谷判官(つまり浅野内匠頭)から、四十七士の行動にいたるまであまりにも様式化されているからだろう。
そういう意味では池宮彰一郎の「四十七人の刺客」は、面白かったのだけど、歌舞伎となるとそうも言ってられない。

>> 忠臣蔵はいつまで共感されるのかなあ。の続きを読む



218-parisO.png
2013年11月5日 サントリーホール
パリ管弦楽団 演奏会
シベリウス: 組曲『カレリア』 op.11
リスト: ピアノ協奏曲第2番 イ長調 S125
〈アンコール〉
ラヴェル :『クープランの墓』から「メヌエット」
サン=サーンス: 交響曲第3番 ハ短調 op.78 「オルガン付」
〈アンコール〉
ビゼー:管弦楽のための小組曲op.22『子供の遊び』より「ギャロップ」
ベルリオーズ:『ファウストの劫罰』より「ハンガリー行進曲」
ビゼー:オペラ『カルメン』序曲
ピアノ:ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ
オルガン:ティエリー・エスケシュ
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
パリ管弦楽団
=========================================================
パリ管を聴いたのがいつ以来だったのか、なかなか思い出せない。確実に記憶しているのは1985年にパリで聴いたことだ。バレンボイムのスクリャービンで、まだ僕は大学生だった。
おそらく、それ以来だと思う。つまり、「ほぼ初めて」ということだろうか。フランス放送響は幾たびか聴いているのだけど、パリ管はなぜか縁がなかった。
一曲目から少々驚いたんだけど、ヤルヴィという人は本当に律儀だ。カレリアが、あまりに立派で、堂々としていることに少々驚いた。
かなり、ズッシリした前菜。しかし、ソースはくどくない。このコンビ、どうやら絵にかいたようなフレンチ・テイストではなさそうだ。
リストは、ピアノが精妙だけど軽やか。チェロのソロとのアンサンブルは、本当に印象的だった。2番のコンチェルトを聴く機会は少ないが、重すぎず、まとまりもあって、もちろん華やか。この日の演奏の中で、ある意味もっともフランスらしさを感じたようにも思う。
そして、サン=サーンス。
こういってしまうと身も蓋もないけれど、この曲はプロフェッショナルが真っ当に演奏すれば、必ず盛り上がるようにできている。だから、聴き終ってしばらくするとフィナーレの印象ばかりが記憶に残ることが多い。

>> ヤルヴィは、律儀なフレンチ・シェフだった。の続きを読む



216-YoYo.png
2013年10月28日 サントリーホール
ヨーヨー・マ チェロ・リサイタル
A.A. サイグン パルティータ
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV.1007
M. オコナー アパラチア・ワルツ
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調 BWV.1008
(休憩)
G. クラム 無伴奏チェロ・ソナタ
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 第3番 ハ長調 BWV.1009
=====================================================
そもそも、バッハの「無伴奏」は、どんなシーンで、誰のために演奏されることを想定していたのだろうか。「無伴奏」に限らず、バッハの世俗曲を聞くとそんな想いが頭をよぎる。
そして今回の来日公演で、ヨーヨー・マのコンセプトは明快だったと思う。
「無伴奏チェロ組曲をコンサートで奏でるための最良の方法」を、考え抜いたのだと思う。
プログラムは、上記のとおり。サイグンとオコナーの後は、休みなくバッハへと入っていく。クラムの後は拍手を受けたが、座るやいなや、ざわめきの中をあの下降音階が駆け降りる。
つまり、バッハ以外の曲が、バッハと一体となって奏でられる。その結果、これば紛れもなくライブであることを実感できるのだ。
「無伴奏」の6曲は、上等な肉を部位ごとに6皿出すようなものだ。おいしいが、続けて食べてどうなんだろうという感じもある。そこに、絶妙の前菜を組み合わせた。
無伴奏だけをひたすら聴くと、曲を聴くのではなく「バッハ」という存在の重みを、良くも悪くもずっしりと体験することになる。しかし、その束縛から解放されたことで、それぞれの曲の、軽やかさやダイナミズムが浮き彫りになった。

>> ヨーヨー・マが歌う「無伴奏」。の続きを読む



2013年10月11日 歌舞伎座 夜の部

歌舞伎座新開場柿葺落 芸術祭十月大歌舞伎
通し狂言 『義経千本桜』
四幕目 木の実 小金吾討死
五幕目 すし屋
六幕目 川連法眼館
========================================================
213-201310kabukiza_b03.png今春に新開場となった、歌舞伎座に初めて行ってきた。開館当初は慌ただしそうだったのだが、そろそろ落ち着いたかなと思って先月末に空席を調べたら、おそろしくいい席が空いていた。いわゆる「とちり」の列で、ほぼ中央。
柿葺落公演ということで、秋からはわかりやすい人気演目が並ぶ。11月も12月も忠臣蔵というのは少々驚くが、こういう機会でもないと大物の並ぶ演目はそうそう見られない。
この日も、仁左衛門の「いがみの権太」と菊五郎の「忠信/源九郎狐」が客席を沸かしていて、こうなると舞台自体について特に書くこともない。「とてもよかったです」と子供の感想文の域を出ないわけで、そもそも歌舞伎自体はコンサートや落語ほどに接していないので、何か評するには圧倒的に経験が少ないのだ。
そういわけで、今回は舞台の外のお話など。
まず、エントランスから座席周りは本当に良くできていると思う。特にシートの前後のピッチが広くなったのはありがたい。新しいホールがゆとりあるかというとそうとも限らない。東京宝塚などはかなり窮屈だ。
素晴らしいと思ったのは、音。セリフも義太夫も、楽器の音もバランスがいい。これも新しいからいい、というわけではなくてカテゴリーは違うが渋谷のシアターオーブなどかなりひどい。先の東京宝塚もそうだが、複合施設のホールはどこかに無理がある。そういえばオーチャードもダメだ。そもそも東急はまともなホールを作れないのだろうか。
話が、逸れた。

>> 歌舞伎座の片隅に勘三郎を見止めて。の続きを読む



(2013年9月30日)

カテゴリ:見聞きした

2013年9月28日 14:00 青山劇場
立川談春 独演会2013「デリバリー談春」
『厩火事』
(休憩)
『たちきり』
=======================================================
久しぶりに談春を聞いた。遠ざかっていた理由は単純で、大きなホールでの会が多かったからだ。今回の青山劇場は1200人ほど。人気があるのだから、ホールが大きくなるのは仕方ない面もあるが、その辺りは聞く方にとっても悩ましい。
しばらく遠ざかっていたが、改めて聞くと、唸ってしまう。
ただし感心して唸るのではなく、「う~む」と首を捻るような唸り方である。いかにもオヤジ臭くて申し訳ないが。
一席目の「厩火事」だが、僕は最後まで話に入れなかった。理由は簡単で「お崎」という女性が、全然見えてこなかったからだと思う。
夫婦げんかが絶えず、相談を持ちかけてくる女房で、突拍子もないが憎めない。愚かな所もあるが、どこか「可愛い」というのが、この役どころだと思っていた。
談春のお先にはこの可愛らしさがどうしても滲んでこない。ややわがままで、下手をすると「うざい」女に聞こえてくる。
途中で彼女がかなりの突っ込みを入れるのは、この噺のお約束だが、今回の流れだと途中からは単に「客を笑わせるための道化」のような役回りになっている。
落語というのは恐ろしいもので「何か、違うな」と思うともう入れない。結局、僕はこの噺でほとんど笑うことはなかった。

>> 談春はどこへ行くのか。の続きを読む