今日は、セグメントとターゲットについて具体的な事例を見ているわけですが、何度も言うように「性・年齢」だけで、ターゲット探っていくのはかなり困難になっています。そこで重視されているのが「消費行動変数」という視点です。(中略)
いろいろ変数を見てきましたが、次は使用頻度(user rate)についてです。これは、ユーザーが、そのカテゴリーをどのくらい使用するかという頻度によってセグメント分析をします。
ここで、問題になるのはいわゆる「ヘビーユーザー」という存在です。全体では少数派だけれど、多くのシェアを消費している場合。たとえば20%くらいの人が、市場の80%を消費しているのであれば、この20%の人々を徹底的に研究してターゲットにしようとするわけですね。
これは、モノによって全く違います。飲料で言うと日本茶というのは、それほどのヘビーユーザーはいません。そして嫌いな人もいない。どうでしょう、季節によるだろうけど平均すれば、みんな週に1~3回くらいは飲んでいるんじゃないかな?
じゃあ、缶コーヒーだけど、飲まない人は?あ、結構いますね。じゃあ、飲む人…で、そのうち週3回以上の飲む人は?
なるほど、缶コーヒーの場合飲む人が結構限られていて、かつその人たちがやたらと飲むという市場です。学生だと、毎日も飲まないかもしれないけれど、社会人にはヘビーユーザーも多い。何本も習慣的に飲む人もいます。そして、圧倒的に男性です。
そして、職業的には大きく二つにわかれます。一つはいわゆるオフィスのサラリーマン。こちらは、シャキッとしたいという覚醒のニーズです。あまり甘くない、あるいは無糖も欲しがるでしょう。
もう一つは、工事や運輸などの現場で働く人。こちらは、体を使うので糖分を欲します。
そして何よりターゲットの像が違いますよね。
簡単にいうと、缶コーヒーの広告はあまり「カッコ良すぎる」とうまくいかない。ちょっと泥臭いくらいがいいんです。実際に見てみようか。
結構前のことだが、facebookのとある知り合いのウォールで議論になったのだけど、「タレント広告って、正しい戦略なの?」という話があって、僕も茶々を入れたんだけど、いい機会なので一応整理しておこうと思う。 まず「ブランディング」という観点から考えた時に、タレント広告を積極的に推奨する研究者は知っている範囲では「いない」という感じがする。 理由は単純だ。ブランド連想の中核は、名前、ロゴやマーク、そして製品やサービスから受ける印象であるべきで、だからこそ「ブランド」として永続性を持つからである。 それなのに、ブランド連想の中核をタレントという外部資源に預けるというのは、あまりにリスクが高いからだ。ちなみに中核を預けるつもりでなくても、一度広告に起用すると連想の上位、それも多くの場合1位がタレント名になるのである。 スキャンダルなど問題外だが、そうでなくてもタレントの価値はブランドと無関係に上下する。俳優だってずっと人気を保つ人は稀だし、スポーツ選手なら当然成績も変わる。 しかし、こと短期的なセールスに関していうともちろん効果はある。 図は、CMの出稿量と認知率を示したモデルだ。大雑把なんだけど、CMを出稿するほど認知は上がる。これを定期的に調べてデータ化すると「このくらい出稿すればこのくらいの認知」というのは調査会社や広告会社には蓄積されているし、実績のある大手広告主も知っている。 そして図の★のように、「出稿量の割に認知が高い」CMがありがたいわけなんだけれど、この手のモノを分析すると、その多くがタレント広告なのだ。しかも人気タレントほど、認知を取るには手っ取り早い。 >> タレント広告とブランディング、という件。の続きを読む
先日、博報堂の生活定点が20年分の基礎データを一気に無償公開したので、こんなエントリーを書いたら結構反響があったらしい。「生活定点」で検索すると、結構上の方に出てきていた。
で、今日は旬のテーマで一つ書いておこう。このグラフは「ハロウィンを祝った人」の割合である。全体的にジンワリ増えているけれど、性・年代別にかなり差がある。多いのは女性で、男性はどこの年代も多くはない。
ここまでは、まあ予想がつくのだけれど08年あたりから顕著なのが40代女性の伸びだ。
で、この生活定点を見ていく上での注意なんだけど、調査対象の「**代」は調査ごとに母サンプルの20%が入れ替わっているということだ。
この調査は2年に一度行われている。したがって10年経つと、母サンプルはすべて入れ替わることになる。
ということは、2008年頃から「40代がハロウィンを祝うようになってきた」という見方もできるが、「ハロウィンを祝うような人が40代になってきた」という観察もできるのだ。厳密には特定の世代の塊(コホート/cohort)を追求することが必要だが、仮説を立てるにはこのデータでも十分だろう。
そして、このデータはとにかく質問が多い。そこで「クリスマスを祝った」という人の割合を見ると、同様の傾向が見られる。60年代後半以降に生まれた女性は、「イベント好き」で、ということなんだと思う。
博報堂生活総合研究所の「生活定点」のデータが、2012年の最新版を含めて過去20年分が一気に無償で公開された。とりあえず、話題になっているようでネットでも気になる人は多いようだし、クライアントからも耳にする。
このデータベースは、国内のマーケティングの仕事をする上ではきわめて優れたデータなのだが、意外と使われていないような気もする。ただし、このデータは本当に貴重で実用的だ。今回オープンになったことで、現場の仕事は結構変わるかもしれない。
僕は2004年に退社して以降、このデータは自分で買っている。内容に比べればまったく高くない。つまり、もともとオープンデータなのだ。しかし、2年おきのデータで1回のCD-ROMには過去5回分、つまり10年分のデータしかない。
その辺が不便で、たまに自分で編集加工していたのだけれど、今回は20年分が通観できる。新生児が成人になるまでの20年だから、世代交代に関わる構造変化も読みとれるだろうし、将来予測も見えやすくなった。10年ではトレンドを見るくらいしかできないので、これもありがたい。
僕自身、この調査はかなり自分のビジネスに役立ててきた。それは退職して独立以降の話である。全くのフリーランスがマーケティング・コンサルティングをすると、「自前のデータ」はない。では、オリジナルの提案ができないか?というとまったくそんなことはない。
僕はクライアントから相談を受けると、日本の政府統計、シンクタンクが公開データを組み合わせるだけで、仮説を作って持っていく。その際に「生活定点」の説得力は高い。
実際に、こうしたデータを組み合わせた分析で、広告会社が作った企画の前提をひっくり返すことも十分に可能であることもよく分かった。
>> 口先マーケターには脅威?「生活定点」公開。の続きを読む
“The Economist”に電通のイージス買収を取り上げた記事があったので、ちょっと日本語にしてみた。要約すると
- いい判断だと思うが50億ドルとは、マジぶったまげたな、もう
- ただ、企業文化の違いを乗り越えるのは結構大変だよん
- そういえばシュワルツネッガーの「チチンブイブイ」の時は驚いたなあ(←なんで今さら)
ホント、拙い文なので参考までと言うことですが。
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本社ビルを覆うグレーのガラスのように、電通を外から窺い知ることは難しい。アジアでは最大の広告代理店で、2001年の売上総利益は3,300億(42億ドル)を超え、日本の伝統的広告の市場の約30%をおさえている。そして日本のメディアに対して過剰ともいえる影響を及ぼしていると、識者はこぼす。東京の高千穂大学の新津重幸は「日本の情報コントロールに、十二分なパワーを有していることを疑う余地はない」と言う。
しかしグローバルな舞台において、電通は端役に過ぎない。売り上げの84%を日本市場に依存して、その足元は縮小している。そこで、既にご存知の通り、7月12日に電通はロンドンを基盤にするイージズを傘下に収めた。そして、その価格には思わず瞠目したものだ。そう、シュワルツネッガーが日本のビタミンドリンクのCMにファンシーな服で登場した時と同じくらいの驚きといえる。電通は32億ポンド(50億ドル)を現金で支払う予定であるというが、それは当期純利益の19倍である。
このニュース以前にも、広告業界では6月にはWPPがデジタルマーケティングファームのAKQAを5.4億ドルで買収し、今月初めにはフランスのピュブリシスがロンドンのBBHを1億ユーロ(1.2億ドル)で傘下に収めるという動きがあった。しかし電通の欧州進出で、そうした動きもすっかりかすんでしまった。
いろいろな面から見て、この買収はよい選択だろう。イージスは電通の資金力と腕力の恩恵を受ける。一方で、電通はイージズのメディアプランニング/バイイング、とりわけデジタル分野における高い専門能力から利益を得るだろう。日本メディア界の王(top trumpeter)はついに悲願の欧米進出を果たし、日本での利益は58%程になる見込みだ。イージスの役員会はこの件を承認し、最大株主であるバンサン・ボロレはしてやったり。さて、これから何の問題があるのだろう?
>> “The Economist”の電通関連記事。の続きを読む