選挙が近くなったので、一つ書いておこうと思っていることがある。
それは、若い世代は選挙に行っても意味がないのか?という話だ。今年大学の講義でも「投票率の向上」をテーマにしてみたりしたのだが、年代別投票率の件はたしかに気になる。
昔から若い方が投票率は低いのだけれど、最近になって聞く議論は「高齢者が多いから若年層は選挙に行ってもムダ」というような話だ。
一方で、都市部の票が軽いことも考え合わせると、それはそうかもな、という気になってくる。 “若年層が選挙に行かない理由”をネットで調べてみると、「いまの選挙は高齢者有利だから棄権」という声も目立つ。
ただし、本当に「行ってもムダ」かというとそれは違うのではないだろうか。
昨年12月の総選挙データを元に、年代別の有権者の中で「投票」「棄権」をグラフ化してみた。たしかに、この投票結果であれば仮に完全な比例代表制をとっても、高齢者のパワーが強いように思える。
ただし、これは結果だ。「どう動かすか」という視点でみれば、注目するのはブルーの「棄権者」だと思う。この層が動けば、かなり流れは変わるのではないだろうか。
博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が毎年発表する「メディア定点調査」というのがあり、今年は6/10に発表された。携帯からのネット接続がかなり伸びた、などというニュースを聞かれた方も多いかと思う。(スマートフォンは携帯に含まれている)
この調査は、前期の講義の間にちょうど発表されるので、今年も早速紹介した。
東京地区については、性・年齢別のデータも出てくるので大雑把な流れはつかめるのだが、その推移をまとめた一覧はない。だったら講義資料をつくる合間にまとめようかと思い立ち、グラフ化した。
データがいまの形で比較できる2007年からだけれど、やはり時系列で見るといろいろ「なるほどな~」と思うところもある。
まずは、メディア接触時間の「合計」の推移の性年代別だ。(単位は分/左が男性・右が女性/10代は15~19歳)
全体に波はあるけれど、大体こんなことが見えるのではないか。
>> 【メディア定点の時系列①】接触時間は安定的に飽和の続きを読む
先般、知人がコンビニで久々に女性誌を手にしたら「驚くほどズッシリ重かった」と言っていた。金融危機の後、雑誌広告が急減して「軽い雑誌」が増えていたことはたしかだけど、その後の「アベノミクス効果なのかな?」と言ったのが、おもしろかった。
こういう話を、最近よく聞く。飲食店が混んでいても、タクシーがつかまらなくても「アベノミクス?」と思うようだ。
ただし、この「アベノミクス」はコンセプトが提示されただけで、まだ何もおこなわれていない。
いわゆる「プライミング効果」のような一面があるように思う。
プライミング効果、というのは心理学の実験などで実証されている。あらかじめ、特定の先行刺激を与えると、それが「呼び水」となり、あとから受けた情報と関連付けてしまうというものである。
テキストにも取り上げられているものに「ピザと10回言って」という遊びがある。「ピザピザピザ…」と10回言ってもらったあとに「ここは?」と肘を指すと、多くの人が「膝」と答えてしまうものだ。「ミリン」とか「シャンデリア」とか「平山」とか、バリエーションがあったと思う。
アベノミクス、というのもよく分からないままに言葉だけが先行した。ただし、円高修正や、株高になったので多くの人は「アベノミクス」と関連付ける。先の話で言えば、女性の広告出稿は昨年から回復していたらしいので、あまり関係はないだろう。
でも、人々はわかりやすい文脈をつくってしまう。
間もなく12月になって1年を振り返ろうという特集も多くなってきた。総選挙があるために重大ニュースなどはギリギリまで見えてこないだろうが、ヒット商品番付などはチラホラあらわれてきた。
一番早く出るのは「日経トレンディ」なんだけど、この雑誌の面白いところは次年のヒットを予測しているところだ。この号は何かと便利なので買うことは多いのだが、自宅の本棚を整理したらちょっと前のが出てきた。
そこで気になったのが「この予測どのくらい当たったのか?」ということだ。意地悪な発想のようだけれど、実際に見てみると「当たらない」背景には、それなりの理由もあってそれが日本市場の特徴や問題点を反映しているんだな、ということも感じたのでちょっとお付き合いいただければと思う。
手元の範囲なのでずっと遡るわけではなく、2010年と2011年の予測と結果をまず見てみよう。
左右を実線で結んでいるのは「当たり」で、点線は「関連性あり」という感じである。
まず2010年だが、「食べるラー油」が1位。これは予測の中にも「ガツ盛り調味料」として入っている。その一方で「低価格クラウドPC」「電子ブック」は、iPadの中に取り込まれたようにも見える。そしてスマートフォンが3位。
2011年の1位はスマートフォン。予測では「スマホリンク家電」があるが、そこまでは広がらなかった。そしてfacebookが2位になっている。この年は震災の影響もあって「”節電”扇風機」などがは入る一方で、「はやぶさ」の新幹線極上ツアーは圏外になったわけだ。
また新書サイズタブレット、というのも予測には入っていたが、これは今年になって広がっている。
改めて感じるのがアップルの強さだ。電子書籍回りのモノはなかなか動きが悪い一方で、iphoneとiPadが大きな存在感を持っている。また電気自動車が伸びない中で、軽自動車の性能は燃費を含めて伸びていたり、「カップヌードルごはん」や「仮面ライダー」のように知名のあるブランドのバリエーションが目につく。
2012年はスカイツリーが予測通りのトップ。LCCも入っている。また正麺やメッツコーラのように既存カテゴリーの進化形も目につく。またLINEやなめこについては、スマートフォンの伸びがあってのランクインだ。
>> 日経トレンディのヒット商品予測って、どのくらい当たったんだろう?の続きを読む
というわけで伝統的マスメディアの問題を考えてみたんだけど、みんな「テレビ離れ」って言葉は聞くよね?(一同頷く)でも、一方でテレビを見ている人は結構多いし、視聴率で1%と言っても普通の雑誌以上の視聴者がいることになる、という話はしたよね。
では、広告メディアとしてみた時にテレビの価値ってどうなんだ?という話。
じゃあ、この講義は少人数だから、前から順に一人ずつ答えてください。
質問は、「どんな人がどんなテレビ見てるか?」です。はい、前から
『主婦が、昼から午後にかけて』ドラマとか?『はい、あとワイドショー的なニュース』なるほど
『高齢者が…』いつ?『うーん、一日中』夜は?『早寝だから深夜は少ないかな』
『大学生』自分達じゃない、いつ頃?『11時以降の夜かな』 だろうね
『会社員…』いつかな?『朝見て…あとはいつだろ。夜中かな?そんな時間ないか』
『小学校の高学年』何で?『自分が高校の頃見てたものに弟とかやたら興味示してた』君は?『やっぱり一番見たがったのは中学までかも』
『子ども』どのくらい?『幼稚園とか、朝からアニメとか見る』多いよね、休みの日とか
たしかに、こんな感じの人がテレビを見ているかな。
じゃあ、もう一度黒板眺めてもらったうえで次の人に質問。
「いまの日本で、テレビをたくさん見ている人って”どんな人”?」