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まだまだ、SMAPの騒動は相当波紋が広がるんだろう。ただのタレントグループの話というより、企業の跡目争いにも見えるが、テレビなどのメディアや広告の関係者は大変だろうなぁ、と思う。まだ、今後の展開はわからないが、4月の番組改編とか、新年度のキャンペーンとかを考えると、このタイミングで「爆弾」を一度炸裂させておくということなのかもしれない。

言うまでもないが、SMAPをはじめとするジャニーズ事務所のタレントの影響力は強い。彼らを起用すれば、テレビの世界では視聴率を獲得できる確率は高まるわけで、まさに「基軸通貨」のようなものだ。

さらに、テレビ局を支えるCMでも、彼らの価値は高い。テレビ局経営は、二重の意味で彼らに依存している。いわばジャニーズ事務所はTVビジネスに基軸通貨を発行しているわけだ。だから、彼らの価値が暴落しないように、その露出は絶妙にコントロールされている。緩和政策などあり得ないし、ましてやバズーカなどするわけがない。

年末年始にテレビ雑誌を買ったのだが、コンビニで見た限りでは、表紙はことごとく嵐だった。以前はSMAPだったと思う。

表紙だけではなく、中を見てもジャニーズ中心の編集で、彼らがどの番組に出るか?という切り口で誌面が構成されている。ドラマやバラエティー、あるいはニュースにいたるまで、編成表のどこに彼らを配置するか?視聴率を確保するためには、限られた通貨を以下に上手に使うかがカギになるのだろう。

かつては、この基軸通貨がプロ野球の巨人戦だった。こちらのサイトによると、2000年くらいまで、巨人戦の視聴率は20%をキープしている。4月からの改編では巨人戦を中心にして、ゴールデンタイムが組まれていく。 >> テレビ界の「基軸通貨」としてのジャニーズ。の続きを読む



会社を辞めて10年以上が経つが、夜に仕事はしないし、平日の外食は週2回程度なので、結構家で食事をしている。ところがゴールデンタイムのプログラムは、殆ど見る気がしない。結局、録画したものを見ることになるのだが民放だと「タモリ倶楽部」と「YOUは何しに日本へ?」くらいで、あとはNHKになる。

BS世界のドキュメンタリーなどは結構見ごたえがあるのだが、食事時に「サイゴン陥落」とか「独裁者スターリン」というのもそうそう気が進まないので、「サラメシ」「妄想ニホン料理」「世界入りにくい居酒屋」「キッチンが走る」など、気がつくと「NHK×食」がやたらと多い。
NHKが「食」が得意というより、民放だと「店紹介」以外の企画が殆ど出て来ないというわけで、それもどうかと思うけど、中でも「サラメシ」っていろいろと今の世の中を映し出している気がする。

「サラリーマンのヒルメシ」がテーマで、いろんな職場を取材する。ホテルや空港などちょっと特殊な職場の裏側もあれば、レタス農家や町工場など、いわゆるサラリーマンとは少し異なるときもあるが、それはそれで面白い。

典型的な外回り営業に密着することもあれば、若い企業で「月1回は持ち寄りランチ」みたいな職場の紹介もある。

でも、この番組、前向きのようでいて、どこか後ろ向きだ。

もちろん、「ランチでパワー」がよくわかるし、出てくる人は元気で職場は明るい。ただし、実際の職場がこんなに楽しそうで元気かというと、実際はそんなところばかりではないだろう。
「いま」を取材しているようだけど、映し出される空気感はどこか昭和だ。 >> 後ろ向きのまま前進~昭和が漂う「サラメシ」の空気感。の続きを読む



では、どうしてステマ騒ぎはなくならないのか?ということをもう少し突っ込んで考えてみよう。まず、どういう時にステマが起きやすいのかをさっき書いてもらいました。

(この後、学生からの意見をもとに講義)

幾つか出てきた内容を見ていくと、「企業・メディアと消費者との情報格差」という辺りが1つの理由になっているなと思いますよね。

つまり、消費者が「本当のことを知らない」と思っている例。携帯キャリアは「どこがつながりやすいのか?」というのも、その一つだよね。レストランやホテルなどでも、行ったことがなければ、メディアに頼るしかないわけだ。

逆に「自分が詳しい分野」であれば、こうした不安は起きにくい。趣味の世界でも、初心者は情報に頼るけれど、達人はそんなことしない。もちろん、食事や旅行もおなじだよね。

でも、情報がなければ当然不安なわけです。

ちなみに「食べログ」のコンセプトって「失敗しないお店選び」なんだよね。「おいしいものを食べたい」じゃないんだ。それだったら、別のガイドがたくさんあるでしょ。

味だけではなく、価格やサービスなども含めて「用途に応じて最適」な店を探せる、ということを売りにしてるわけです。 >> ステマはなぜ増えたのか?【講義覚え書き】の続きを読む



フジテレビの亀山社長が、記者会見で今の不調を語る中で東日本大震災に言及したらしい。
「日本の意識がいろんな意味で変わってきたのが(東日本大震災の)“3月11日”じゃないかなと。今までの我々がずっと押し出してきたわくわく感、ドキドキ感や、少し浮世離れしたお祭り感というのが、どこかで絵空事に見えてしまうようになったのではないかと」

そうした中で、日本人の意識の変化をくみ取ることができなかった、という反省らしい。

しかし。

言い訳や分析はいろいろあるけど、これは相当に苦しいと思う。経営者の弁明は仕方ないけど、久々に筋が悪いと思った。

震災の直後はともかく、その後にみんなが求めたものは「わくわく」や「ドキドキ」ではなかったのか。NHKの「あまちゃん」は、あえて被災地を舞台にしながら「浮世離れしたお祭り感」を描いて話題になった。

まったく、ズレていると思う。

それに、あの震災で被災しながらも言い訳をしないで努力している人はたくさいるだろうに、4年も経ってから「やっぱ震災が」と東京の経営者が言っていること自体が、すごく変な感じもする。別にフジテレビに多くを期待するわけではないけれど、なにも経営者が先頭に立って「ダメな感じ」を振り撒くこともなかろうに。 >> フジテレビがダメなのは、もちろん震災のせいではないわけで。の続きを読む



(2015年11月4日)

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ベムさんが、嘆いてる。今日のエントリーで、世帯視聴率一辺倒で起きている矛盾について書かれているが、じゃあどうするかというとたしかに難題だ。いつもバッサリ書かれてることが多いようだが、この件についてはやや逡巡も見られて、それほど難しい話だと思う。

「世帯視聴率」というのは、ビデオリサーチが測定し公表する視聴率であって、あのドラマが何%とか、年間1位はどことかいうのも、すべてこれだ。一般的な視聴率ではあるが、問題は「家にいる誰かが見ているとカウントされる」ということだ。

家にいなければカウントされないので、在宅時間の長い人の数字に左右される。また、家にいても「僕は見ない」「私は見る」といった場合は、「私」が見ている番組で決まる。「じゃあ、どうなるかというと年齢の高い人が「世帯」を左右する。
ただし、高齢になるほど広告の効果は限定的になる。一般的に言って、モノはたくさんあるし、あれもこれもとか思わない。あるいは将来不安で余裕がない。別に若者、とは限らなくても、40代くらいまでの人に訴求したいものはたくさんあるんだけど、世帯視聴率を競っても、あまり有効な指標にはならない。

つまり、世帯視聴率が価値の指針になっていないのに、そこから逃れられないのだ。これは他の業界にもあって、「売り上げナンバー1」を競った軽自動車業界は、いわゆる未使用車という在庫を抱えて大変なことになった。「全都道府県出店」を果たしたコンビニはセブンイレブンではないけれど、コツコツと満足度を上げてきた同社が平均日販でアタマ1つ抜けているのはよく知られている。

世帯視聴率は、広告ビジネスにおける最強の通貨だった。一方で、新聞や雑誌の発行部数は通貨としては暴落して、ネットなどの指標が新興通貨になったわけである。

じゃあ、この通貨に代わりはあるのか?近年になって、ビデオリサーチ以外にもデータを提供する動きはある。ただし、商慣習の壁は厚い。あるいはビデオリサーチ社が、世帯視聴率に代わる通貨を提供するかもしれないが、広告主と放送局の利害がからんで、想像しただけで気が遠くなるかもしれない。

ただし、このままでは世帯視聴率という通貨は、ガクッと暴落する可能性がある。それについては関係者だって、気づいてはいる。首都圏直下地震が何%と言われても、そうそう誰もが離れないような状況なのだ。

ただ、可能性の1つとして「特区」のような発想はあるのかもしれない。「地域通貨」じゃないけれど、特定の時間帯や期間、あるいはエリアなどで世帯視聴率以外を指標にして広告効果を図るというやり方だ。いわゆる社会実験と称して、高速道路値下げしたようなものだけど、日本的な漸進的変化となれば、この手の発想はあるのだろうか

ただし、この場合はテレビの視聴率だけでは完結しない。そうなると、既にインテージとニールセンが行っているような活動が注目されるだろう。
結局、個別の%や部数などの「量的数字」では意味がない。効果や満足度などを統合した「新しい通貨」を提供しないと、結局はコストと効率の競争になって、それは経済後退期にはメディアを直撃する。残された時間は、限られているのではないだろうか。