新刊のお話、その2。
昨週末、新潮新書から「電通とリクルート」が発売された。またネコに持たせてみた。少しは売り子らしくなってくれただろうか。
中身は、2社の戦後史を追いかけ直して私たちの消費生活の「今までとこれから」を考えてみる、というものである。2社のビジネスを分析したり、ましてや内幕を書いてみようという本ではない。
ある意味、メディアや広告業界の外で生活してきた人が「ああ、情報ってこうやって影響を与えていたのか」ということを考えてみてもらえれば、という気持ちで書いた。一方で、「広告ビジネスはこれからどうなるのか」ということについて書いたわけでもない。業界の話ではなく、とある国の人々の30年程の航跡をたどった本だからである。
いわゆる「広告」というものを「発散志向」と「収束志向」という観点で整理をして、それが社会の中でどのような役割を果たして。今後どうなるのだろうか?という視点で考えた。あまり詳しくここで書いても仕方がないのだけれど章タイトルは
「元栓のうまみ、毛細管の凄み」「情報誌を欲したのは誰か」「『感動をありがとう』の正体」といった感じで、とりあえずamazonのリンクはこちら。
なお、この本にはささやかな仕掛けがあって、それは最後の5行でわかるようになっている。できれば後ろから開かないでいただきたい。
気がついたら、昨日で独立して丸6年だった。
今年は相変わらずひどい暑さが続いているけれど、「出かけなければならない日」は幸いにして4日くらいしかなかった。執筆する仕事がちょうど多かったので、そういうスケジュールになった。
おかげで猛暑の大変さを、なかば他人事のようにして過ごしていた。6時過ぎに散歩に出て、公園のラジオ体操に行ったら、夕方近くのバーに飲みに行くまで家で原稿を書いたり、調べ物をしたり、合間にゲームをやっていた。
こうした日々が続くとしみじみ思うのだけれど、独立して一人で仕事をできるかどうかは、能力以上に、気質の問題が大きいと思う。朝起きて、何をするかを全部自分で決めるという「自由」が苦痛になってしまうような人は、この仕事には向いていない。
昼飯だって、自分で作ってもいいし、食べに行ってもいいし、うっかりビール飲んで昼寝してもいいんだけど、昼休みのチャイムと社員食堂のほうが実はラクだという人も多いだろう。
仕事にいたっては、品質管理がまったく自分の基準だけである。うっかりすると、坂道を下るようなことになっていく。
そもそも仕事を受けるかどうかも自分で決めるわけだ。
最近ふと考えるのは「いつまで仕事するのか」ということだ。しかし、すぐに恐ろしいことに気づいたのだが「仕事ができるのか」という条件をクリアしないと、そんなことを考えてはならない、ということである。
そういう「考えてはいけない」ことをたまに考えてしまうというのはフリーランスの共通の体験なのだろうけれど、そのことをお互いに口には出さないのも、またフリーランスの面白いところではある。
そういうわけで、6年間。それにしても小学校の6年って本当に長かったんだな、とまったく見当はずれな感想くらいしか思うこともない。無事7年を迎えられたらうれしいな、というくらいが抱負ではある。
先週、小霜和也君と飲んだ。 彼は、いまno problem という広告プランニング会社の代表であり、コピーライターで、クリエイティブ・ディレクターだ。まあ、広告業界の人であれば、ご存知の方も多いはずだと思う。 彼と僕は、博報堂の同期だった。86年に入社して2人ともクリエイティブに配属された。その後、僕は幾つかの職種を経て2004年に辞めているのだが、小霜君は98年に辞めている。しかし、彼はずっとクリエイティブ畑の仕事をしていた。ただ、コピーだけ書いているわけではないのだけれど、本籍も現住所もあまり変わっていない、という感じである。 2人で飲むのは、これが初めてだった。 有体に言うと、まあ別にそれほど近しいわけではなく、まあ、何となくそうだったというわけだ。 きっかけは、昨年出版した”買う気の法則”の感想を、彼がホームページ経由で届けてくれたからだ。それから、また何ヶ月も経ってやっと会うことができた。 まったく異なるような道を歩んできながら、いまのマーケティングや広告の現状に対しても問題意識は驚くほど似ていた。それはそれで、単純にうれしかった。 彼は広告学校も主催しているが、そうして育成に関心を持っていることもまた、不思議だった。 そして、今月には単行本を出版するという。 僕たちの世代は、いわゆるマス広告が華やかだった時代を知っている。 ただ、知っているということが「知っている」にとどまっていて、それが現状の突破に結びついていない。そんな意識がある。 それに、過去の体験でも捨てなきゃいけないものはたくさんある。 一方で、メディアをめぐるテクノロジーの変化は早い。その変化をフォローすることは大切だけど、変わらないこともあるだろう。 変わること、変わらないこと。それを見きわめるための議論が重要なのに、極端な意見がどうしても目につく。 実は、小霜君と僕が話して頷きあっている内容をまとめて書いたら、とってもアタリマエのことしか残らないだろう。 しかし、そのアタリマエが忘れられたまま右往左往しているのが、いまの広告ビジネスの姿なんじゃないか。 そういえば思った。「あの人はアタリマエのことしか言わない」って人って、そのアタリマエができてない。その癖、どうでもいいような「名言」が好きだったりする。 気づいた方が、いいと思うな。
フリーランスなので年度が変わってどうなるわけでもないのだけれど、この4月はいろいろと節目だった。
このホームページ変えて、いろいろと新しい情報発信を試みた。
青山学院大学の講義は今年から3~4年を対象にしたもので、科目も「キャリア・ディベロップメント」から「マーケティング・プロフェッショナル実践」という、まったく違ったものになった。学生から見ると、淵野辺から青山に行ったら同じ人物が全然違う講義を始めているので?に思ったかもしれない。
5時限の講義で、中間リポートを多くしていたので履修者は少ないかと思っていたら、想像以上に多いようだった。昨日は第1回のリポートを共有する講義だったが、想像以上に面白い。学内のウェブを最大限に活用した講義の進行を想定している。
前期の後半は広告なども見ていこうと思うが、各社のホームページから見られるのでかなり色々な実践的展開ができそうだ。
後期は業界ごとのケーススタディをすることで、就職活動にも役立てるような構成にしようと思っている。
実はこの講義のテキストにする本は、現在進行形昨日ゲラが届いた。12日戻しかと思ったら7日と書いてある。連休は校正三昧になるかもしれない。ただ、このスケジュールじゃないと前期試験の前に余裕を持って発刊できないのだ。
今日から数日間は、休みをとって電波の届かないようなところにいる。しばらくはこちらの更新も休みにする予定。