先日、とある旅館からダイレクトーメールが来た。一度しか行ったことはないのだが、ぜひ再訪したいと思ってたところの一つだ。手書きの文字が印刷されていて、移動自粛期間の辛さや、海外にいる娘さんの故郷への思いが綴られていて、とても沁みてくる。
飲食店もそうだったけど、何が食べたいとかどこに行きたいというよりも、コロナ禍の頃から、「この人のところへ行きたい」と思ようになった。
こんなことになるまで、月に一度はどこかに泊まっていたが、近年は家族でやっているような小さな宿が多かった。宿泊サイトで空室はチェックするが電話で予約をして、現金で支払うこともある。手数料をR社やR社に支払うくらいなら、彼らに気持ちを届けたいからだ。
だから、旅に出るタイミングはずっと考えてる。そして、観光業界を支援するための政策は必要だと思う。
ただ、いまのGO TOの迷走を見ていると、一気に「大きな物語」をつくろうとしたことが、よくなかったと思うのだ。
どういうことか、順に書いていく。
まだ緊急事態宣言が継続されていた4月末に短いレポートをつくって、noteでダウンロードできるようにした。こちらのページから誰でも見てもらえるようになっている。
タイトルは『「小さな物語」を紡ぐ消費者インサイト~COVID19と広告/コミュニケーション』とした。その中で、こんなことを書いている。
・緊急事態が終わっても「おそるおそる」の生活になり、人によって感染症への感覚は違うので「まだら」な行動になる
・そのため「次は〇〇しよう」というLet’s~タイプのマーケティングは慎重になるべき
・「こんなこともできるよ」という「小さな物語」を代替案として提示していくことが大切になる
という点から見ると、GO TOは「さあ皆で行こう」だからリスクが高い。大昔のディスカバージャパンのような感じがする。大切なのは「行きたい人から行きましょう」とそっと背中を押すことだろう。
さっきも書いたように、「この人たちを」という気持ちは多くの人が持っているはずだ。そこまで顔を知ってるわけではなくても、我慢を強いられてる業界の人たちを応援したい気持ちを持っている人は多く、飲食店などでも近場を応援する動きは目立っていた。
ただ、みんな「おそるおそる」なのだ。そう考えると、まず「かつて行ったところ」や「前から行きたかったところ」からそろりそろりと行くだろう。そこで再会の喜びや、旅の嬉しさが自然にシェアされるような設計だったらどうだっただろう。
GO TOは、どこか勇ましい。でも大切なのは行くことじゃない。「会う meet」「分かち合う share」「再開/再会 reopen/reunion」など、コンセプトの立て方は他にもあったと思うのだ。
でも、いまからでもできることはあるんじゃないか。「いままで不自由をかけたけど、ぜひ足を延ばして、出会いの喜びを分かち合っていただきたい」と「小さな物語」を紡ぐようなメッセージをリーダーが呼びかければ空気は変わると思うのだけど。
※本文でも触れましたが「コロナと広告、消費者インサイト」という切り口で、レポートを書いてみました。これからの企業コミュニケーションや広告についての考察です。こちらのnoteにアップロードしているので、ダウンロードしてご覧ください。