久しぶりにオーケストラの演奏を聴いた。7月25日の土曜日、14時。東京交響楽団の演奏会は、指揮者のいない『ハ調の交響曲」で始まった。ストラヴィンスキーのこの曲をライブで聴くのは初めてかもしれない。
それにしても、同じ空間で人が演奏しているというのは、なんと素晴らしいことか。客数を抑えているサントリーホールは、いつもより良く響いている気もする。
定員の半数に制限された客席だが、さらに空きはある。僕も世の中の状況を見て迷ったから、自重している人も多いだろう。
ただ、高校から大学にかけてオーケストラに所属していて、そこで学んだ無形の何かは自分にとってとても大切で、こうやって行くことで何らかの「恩返し」をしたいという気持ちがどこかにある。誰に、というのはなく音楽をしている人に対して。
そんなことを休憩中に思いつつ、後半はベートーヴェンの「英雄」。音楽監督のジョナサン・ノットが来日できなかったのだが、「諦めが悪い」彼は、「指揮映像を収録し、楽員がそれを見ながら演奏する」という提案をした。このあたりの経緯はプログラムに書かれているのだが、事務局長の辻敏氏の名文はこちらからも読める。
指揮者のいるべき場所には、4つの大型モニターが四方に向けられて設置される。客席にも向くので、客はノットと向かい合うようになる。
演奏が始まると、最初は指揮者が気になる。何もないところで1人で振っているのか?すごい精神力だな、とか考えていたのだが、途中であまり見ないようにした。眼をつむって聴いていれば、そこでは堂々とベートーヴェンが流れている。
フィナーレが終わった時の、ズシンとした感動は、いままでのあらゆるコンサートと異質だった。 >> 東京交響楽団の挑戦と、オーケストラのこれから。の続きを読む
先日、とある旅館からダイレクトーメールが来た。一度しか行ったことはないのだが、ぜひ再訪したいと思ってたところの一つだ。手書きの文字が印刷されていて、移動自粛期間の辛さや、海外にいる娘さんの故郷への思いが綴られていて、とても沁みてくる。
飲食店もそうだったけど、何が食べたいとかどこに行きたいというよりも、コロナ禍の頃から、「この人のところへ行きたい」と思ようになった。
こんなことになるまで、月に一度はどこかに泊まっていたが、近年は家族でやっているような小さな宿が多かった。宿泊サイトで空室はチェックするが電話で予約をして、現金で支払うこともある。手数料をR社やR社に支払うくらいなら、彼らに気持ちを届けたいからだ。
だから、旅に出るタイミングはずっと考えてる。そして、観光業界を支援するための政策は必要だと思う。
ただ、いまのGO TOの迷走を見ていると、一気に「大きな物語」をつくろうとしたことが、よくなかったと思うのだ。
どういうことか、順に書いていく。
まだ緊急事態宣言が継続されていた4月末に短いレポートをつくって、noteでダウンロードできるようにした。こちらのページから誰でも見てもらえるようになっている。
タイトルは『「小さな物語」を紡ぐ消費者インサイト~COVID19と広告/コミュニケーション』とした。その中で、こんなことを書いている。
・緊急事態が終わっても「おそるおそる」の生活になり、人によって感染症への感覚は違うので「まだら」な行動になる
・そのため「次は〇〇しよう」というLet’s~タイプのマーケティングは慎重になるべき
・「こんなこともできるよ」という「小さな物語」を代替案として提示していくことが大切になる
という点から見ると、GO TOは「さあ皆で行こう」だからリスクが高い。大昔のディスカバージャパンのような感じがする。大切なのは「行きたい人から行きましょう」とそっと背中を押すことだろう。
さっきも書いたように、「この人たちを」という気持ちは多くの人が持っているはずだ。そこまで顔を知ってるわけではなくても、我慢を強いられてる業界の人たちを応援したい気持ちを持っている人は多く、飲食店などでも近場を応援する動きは目立っていた。
ただ、みんな「おそるおそる」なのだ。そう考えると、まず「かつて行ったところ」や「前から行きたかったところ」からそろりそろりと行くだろう。そこで再会の喜びや、旅の嬉しさが自然にシェアされるような設計だったらどうだっただろう。
GO TOは、どこか勇ましい。でも大切なのは行くことじゃない。「会う meet」「分かち合う share」「再開/再会 reopen/reunion」など、コンセプトの立て方は他にもあったと思うのだ。
でも、いまからでもできることはあるんじゃないか。「いままで不自由をかけたけど、ぜひ足を延ばして、出会いの喜びを分かち合っていただきたい」と「小さな物語」を紡ぐようなメッセージをリーダーが呼びかければ空気は変わると思うのだけど。
※本文でも触れましたが「コロナと広告、消費者インサイト」という切り口で、レポートを書いてみました。これからの企業コミュニケーションや広告についての考察です。こちらのnoteにアップロードしているので、ダウンロードしてご覧ください。