大学の講義をオンラインでやった時に、まず考えたのは「できないことに文句言っても意味がない」ということだった。
そんな頃に、いろいろな飲食店がテイクアウトを始めた。そこでふと「これって、オンライン講義のようなものじゃないか」と感じたのだ。
たとえば「そこにいること自体が楽しみ」というようなグランメゾンでは、テイクアウトで価値を出すのは難しい。一方で、定食などは店と似たようなものを出せる。丼物もそうだし、寿司だってそういう店はある。
ただ、そういう店だと「そもそも店で食べる意味はあるのか?」ということになる。
講義も同じだ。同じ教科書やパワーポイントを読んでいるだけの講義なら、その内容をアップロードして学び方を指定すれば、それでもオンライン講義になる。実は、多くの大学では「それでもいい」ということになっているのだ。
これを冷静に考えると「じゃあなんでキャンパスまで行くのだ」ということになる。テイクアウトの丼物に800円出すなら、コンビニのレトルトはその数分の一じゃないかというわけで、やがてそちらに流れるだろう。
同じうように「講義のレトルト化」は学校の付加価値を下げるわけで、実はそのあたりが大きな問題だと思うのだけど、だとするとオンライン用に「ある程度の仕込み直し」をしてライブ講義にしたい。自宅にホワイトボードは確保したけど教室の再現は無理で、かといってレトルトは避けたい。
そんな時に、ふと街を歩いて気付いた。これを機会に「カレー」のテイクアウトを始める店が結構多いのだ。それも専門店ではなく、バーなどの異業種のマスターがチャレンジしているんだ。
いろいろ工夫があって、もちろんスパイスを個性的に使って、複数の料理を複合させていて、レトルトでは真似ができない。そうか、このくらいの仕込みなら飽きさせないでいけるかも。と考えると、オンライン講義も「カレー作り」くらいの感覚がちょうどいいように思ったのだ。
ちょっと無理やりだけど、共通点を挙げてみる。
・受け手の自由度を高める
カレーは人によって食べ方がそれぞれで、自分でミックスしたりもする。「次はこれ食べて」じゃなくて、講義でも考える時間を与えて書いてもらったりすると、集中力が保てる。
・スパイスを利かせる
ちょっと刺激を強めにしたほうがオンラインはいいと思った。難しめの課題で、「もっと考えて」というと、結構食らいついてくる。いい答えが出たら、名指しで誉める。
・トッピングは旬のものを
考えてみればウィルスのおかげでものすごい環境変化を体験できてるわけで、旬のテーマには事欠かない。「これから売れる家電は?」「このニュースはフェイク?」みたいな話もできるわけで。
実は、オンラインでの発見は「チャット機能」だ。教室で質問しても自ら手を挙げることは少なくてもチャットだと結構発言する。ケーススタディで理由を尋ねると、どんどん答えが出てくるので、刺激度を上げることもできる一方で「黙読をすることでの心理的変化を考える」とかいう課題を挟んで書いてもらうと、10分くらいでとてもいい考察がどっと集まる。
青学ではそんな感じだ。
そんなわけで、オンライン講義には教室とは異なる可能性もあると思っている。
※「コロナと広告、消費者インサイト」という切り口で、レポートを書いてみました。これからの企業コミュニケーションや広告についての考察です。こちらのnoteにアップロードしているので、ダウンロードしてご覧ください。