「無限」という概念は、ちょっと考えると気が遠くなり、さらに考えると頭がクラクラする。もう、それが文系脳の限界だと思っていた、、だから、このタイトルを見ると、もうそれだけで不安になるんだけれど、物理学者である著者もその辺りはちゃんとわかっているようで、第一章は「気が遠くなる大きさ」となっていて、ちょっとホッとする。
そして、「無限の本当の意味を考えると頭がクラクラするような結論に導かれる」と書かれていて、多分この「クラクラ」は僕のクラクラとは水準が違うような気がするのだけれど、このタイトルの問いは、それくらいの難題だということだろう。
完全に内容を理解しないで評するのも変だとは思いつつ書いているんだけど、この本は「無限」という概念との付き合い方やその歴史が述べられていて、それがとても興味深いのだ。そして「無限」の概念の扱い方が物理学と数学で異なることも、初めて知った。
「数学の世界では別だが、物理学では普通無限大というものを有限の数が大きくなっった極限として扱う」ということなのだ。その後の説明にあるように、たしかに物理学は測定できる数値を求めるのだから無限の扱い方が数学とは異なる。
一方で、数学的な実無限という視点だと、別の議論が起きてくる。たとえば「自然数全体の集合」と、「整数全体の集合」を比べてその要素の数はどちらが大きいか?というテーマが出てくる。
整数はゼロも負の数も含まれるので、「一見すると整数全体の方が自然数全体よりも多そうだ」ということになりそうだけど、そうはいかない。
なぜなら、どちらも数え始めると無限になっていき「どちらも数え終わらないという意味では同じになってしまい、両者の数に区別をつけることはできない」というわけだ。
というわけで、アタマをクラクラさせながら読み進めていくわけだけど、やはりこのテーマは大変なんだろう。
というのも、このあたりの研究を進めたカントールやゲーデルは両者とも重い抑うつ状態になったというのだ。もちろん他の要素もあるんだろうけれど、なんか「無限についてとことん突き詰める」というのは、どこか人を不安にさせていくのではないだろうか。
最終的には「宇宙」についての最新の研究動向なども解説されていて、同じ著者の『宇宙に外側はあるか』というこれも気になるタイトルの本などと合わせて読むのもいいかもしれない。
この辺りのテーマではもっとも達者な書き手の1人だと思う。