コーンフレークが一気に話題になった。
昨夜のM-1グランプリのミルクボーイのネタなんだけど、受けていたし、ああうまいなと思った。笑いの「つくり」としては、決して新しくない。ぺこぱのように、斬新なツッコミ方をするようなわけではないけど、やはりおかしい。
なんでかな?と思うと、この漫才の本当のボケ役は「コーンフレーク」なのだ。
誰もが知っている食べ物。しかし、コーンフレークには隙が多い。もともと、朝から米を炊くという稀に見る手間をかけた朝食の国でコーンフレークは頑張ってきた。でも、なんか大変そうだ。
やがて、朝食にご飯を炊く家庭は減って、パンが増えて、やがてコーンフレークに行くかと思うと、一気にグラノーラに、「一人飛ばしてパス」という感じじゃないのか。
その、ちょっとした隙を多くの日本人は知っている。だから「最後の食事」も「夜ご飯」も笑いになる。たしかに「五角形」もどこか怪しい。そして「パフェのかさ増し」というのも微妙な役どころだ。
「誰に感謝していいのか分からない」というのは、「腕組みをした虎」の伏線だけど、そもそも「お百姓さんに感謝」という、いまや言われないけど何となく知ってる共通知識を上手についている。
そうか、これを七面倒くさく書くと、コーンフレークに対する日本人のスキーマを利用して、そのインサイトを上手にいじったわけだ。
そうそう。お笑いの共通手法の1つに、その集団の共通知識をもとにして「ボケ役」をいじるというのがある。相方をいじるのではなく、みんなが知ってるボケ役をいじる。だから1人でも可能なわけで、落語のまくらではその時に話題の有名人をいじったりする。
ところが、段々と共通の知識、「みんなが知ってる何か」が希薄になると、その方法が成り立たない。
「ものまね」というジャンルもそういう構造で、たとえばスポーツ選手にしてもかつては野球選手でもネタになったけど、最近はワールドカップやオリンピックじゃないとみんな知らない。
だから、結構ボケ役探しは難しい。その上、審査員を務めたナイツの塙宣之がインタビューで言ったんだけど、たしかに「ツッコミが強すぎてボケが潰される」という傾向になる。ぺこぱは、その傾向を逆手にとったんだろう。
そういう中で、コーンフレークという強力なボケ役を発見したのがインパクトになった。同じパターンでいけば、たしかに「もなか」もそうだ。模様とか怪しい。あれが「ようかん」だとあまりに隙がない。
受け手の共通知識がよくわからない、というのは近頃マーケティングの仕事に関わる人は結構悩んでいるわけだけど、それはテレビを見ている時に何となくみんな感じているんじゃないか。
そういう中で、コーンフレークというボケ役の発掘は、どこか懐かしく何か嬉しいのかもしれない。コーンフレークと牛乳、寒いこの季節に売れたりするんだろうか。