電通「日本の広告費」の文章が、妙にはじけているのだけど。
(2019年2月28日)

カテゴリ:広告など

電通の「日本の広告費」が発表されたが、驚いた。いや、ネットが地上波テレビと来年にも逆転しそうだとか、そういうことではない。発表されている文章が、昨年までとはどこか違っていて、味わい深い。

まず、新たな項目として「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」という項目が、「インターネット広告費」の中に“新設”された。

なんか健康食品の「植物由来成分」みたいだけど、これは「マスコミ四媒体事業社などが主体となって提供するインターネットメディア・サービスにおける広告費のこと」らしい。つまり「インターネット広告ばかり増えているようだけど、マスコミ四媒体もこれだけありますよ」ということだ。

で、「こんなにあるのか」と思うか、「これしかないのか」と思うかは、人それぞれだろう。でも、とにかくこういう項目ができた。

そして、本文がなかなかユニークである。新聞から、雑誌、ラジオ、テレビと淡々と続くが、インターネット広告になるとちょっと口調が変わる。

「クライアントのブランドセーフティーへの関心の高まりとともに、運用型広告についてはより精緻な運用が求められている」「アドフラウド問題への対処などを含め、業界全体に高いコンプライアンス意識が求められている」などと、ちょっと手厳しい感じだ。

そして、新設の「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」が、また独特だ。
まず、新聞は「特にブランドセーフティーへの貢献に注力した一年」「ブランドイメージの毀損を避けるトレンドが強まり、新聞デジタルの必要性が高まってきている」らしい。

雑誌は「アドベリフィケーションやブランドリフトを基点とした出版コンテンツの価値がクライアントに認められ」て、「デジタルメディアシフトが大きく進んだ」そうだ。

テレビにおいては、「TVer(ティーバー)などは、コンテンツ力を背景にさらなる展開が期待される」ということだ。

そして、インターネット広告広告制作費になると、また「デジタル制作の領域でもマーケティングの実効性がますます求められるようになってきている」とご指摘される。
どうやら、ネット広告はいろいろと「求められている」らしい。

昨年までの「日本の広告費」とは、筆致が違うのだ。いったい、何があったのか。特に「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」あたりについては、若々しく筆が踊っていて、なかなかに微笑ましい。

そして、注目は電話帳広告だ。どうやら「『電話帳』は『地域と暮らしのメディア』へのパラダイムシフトを遂げており」とということらしいが、いやパラダイムシフトって久々に見た。

そんなことになっていたとは、知らなかった。しかし企業の発表する文章がここまではじけているのはなかなか珍しいだろう。これもパラダイムシフトなのか。

で、1つだけ気になることがある。今回「ポスティング市場」についても1,129億円と推定している。推定するのはいいのだけれど、このチラシ投函は本来「お断り」している集合住宅内に入って一方的にポストに入れることもある。郵便受けにゴミ入れを置き、そこに入れるようにしている住宅もあるくらいで、余計なコストを住民に負担させている。ましてどれほど目に届いているかわからないのではないか。

いわゆる、かつての迷惑メールの「未承諾広告」と同じような感じがするのだけれど、これを統計に入れるのはどうしてなのかなあ。

そのようにして、広告や広告費の定義を変えていいのか?という疑問もあるわけで、なぜそうしたんだろうということはちょっと気にかかる。

(そういえば、「日本の広告費」って毎年広告学会で発表セッションがあるんだけど久々に行って質問したらどうなるんだろ)