ゴーン逮捕で見える「メディアのいま」。
(2018年11月22日)

カテゴリ:世の中いろいろ

カルロス・ゴーンが逮捕された。報道などを眺めていると「日本のメディアのいま」が見えてくる気もする。

というのも今回の事件は相当にややこしい。日産からの発表や検察からの情報だけで、「はいわかりました」という感じにはなれない。だからと言って、何を言っても推測になる。これはメディアにとっては、「おいしい」状況だ。ネタが豊富なので、いろんな好みに合わせられる「バイキング料理」状態なのである。
そして、あっという間にお腹いっぱいだ。

とはいえ、ざっくり4つに分けるとこんな感じだろう。Pゾーンの地上波TVなどは「公的発表+したり顔のコメンテーター」というお馴染みの組み合わせ。ベルサイユの一件などワイドショーと相性の良いネタもある。

日中のテレビはかつては主婦、その後は高齢女性がターゲットだったけれど、最近はリタイアした男性も多い。だから「日大タックル」のような事件が結構続くのは、あれがある種のサラリーマン社会の縮図だったからだろう。

そういう意味で今回のニュースも、そうとういろいろ引っ張れそうだ。ただし、その質はまあそんなものである。

一方で、いわゆるビジネスパーソン相手のQのゾーンはもう少しいろんな解説をしてくれる。ルノーとの関係や、フランス政府の関与など。ただし、まだまだ掘り下げは足りない感じにもなってくる。

そして、こうなってくるとどこまで掘っていくか?という話になるわけで、Rの辺りもネットや週刊誌で盛り上がるんだろうけど、これが早々に収集つかない感じだ。

そして、ネットを中心にしたSゾーンが賑やかになっている。

ここのあたりだと、Pゾーンの「大本営発表そのまんま」状態に対する反発からからなのか、「日本が閉鎖的に見られる」と案ずる声が出てくる。何で朝日の記者が羽田にいたのか?みたいに検察と一部マスコミの関係を含めて、話の先は「だから日本は」ということになる。

「○○では」、と海外と比較するのが大好きないわゆる「出羽守」の皆さんも多い。ただ、今回はフランスの事情などもあって一筋縄ではいかない。そうなると、Qをどんどん掘り下げていくところがどこになるのか。“?”と書いたゾーンをしっかり押さえるのが、いわゆる「クオリティ・ペーパー」的になれるんだろう。

そんなことを書いてるうちに、一般紙やTVもRゾーンに堕ちつつある感じもするけど。

しかし、いま仕事先などでこの話題をふられると、反応が難しい。何を言えばいいんだろうか。

「しかし、いきなり金商法とは驚きました。それ聞いた時は、インサイダーなのかなと思ったんですがねえ」くらいでお茶を濁すのか。

で、いろいろなニュースで気になったのは、逮捕翌日の火曜には日産の専務が首相官邸に赴き、菅官房長官と会っているという話だ。

産経の記事だと「(専務から)現状報告を受けた菅氏は、ゴーン容疑者の逮捕に驚いた様子だったという」とある。う~ん、本当に驚いたのかなあ。

「部屋に入ってきた長官は、機先を制するように口を開いた。『いやぁ、お疲れさまでした』。心なしか口元がほころんだように見えた」

僕が脚本家だったら、ベタではあるけどそんな情景を想像してみたくなる。あれれ、なんかこれじゃただの陰謀論になってしまったではないか。