2018年04月アーカイブ

前からずっと気になっていたことに「主婦」という言葉がある。

最近は女性の就業率も上がっているが、一方で「専業主婦/兼業主婦」という言い方も根強い。でも「専業会社員/兼業会社員」とは言わない。これから増えるかもしれないが、今のところはあまり聞かない。

つまり、既婚女性が仕事をしていても、「主婦」を辞められないので「兼業主婦」と言うのだろうか?ということになる。

で、調べてみると「主婦」という言葉の歴史を研究した論文があった。実践女子大学の広井多鶴子先生が書かれた『「主婦」ということば』(リンク先pdf)だ。

詳細はそちらをご覧いただくとして、興味深いのは明治以降の「家政学の翻訳書」に「主婦」という言葉を与えたということだ。「主婦」という言葉は漢籍にはあったが、明治になるまでは一般的な日本語としては使われていなかったのだ。

しかし、段々と「家政」というものの啓蒙が広がった結果「主婦ということばは、この時期に、妻が家政担当者であることを明言することばとして成立した」(広井)というのである。そして、主婦という仕事は「女性としての素質、天性に基づく任務」(同)と位置づけられるようになったと論じられる。

もし、「主婦」という概念がなかったらどうだったのか?そう考えてみると、この言葉の持つ「拘束力」のようなものも見えてくる。主婦という言葉があるから「主婦の務め」のような概念も出て来る。「主婦」という言葉を冠した出版社が複数あるように、主婦という言葉は「こうあるべき」という謎の倫理観とセットになっているように思うのだ。

主婦に当たる言葉は、男性だと何になるのか?思いつくのは「主人」だ。先の論文によると、そのような対比で使われたこともあったらしい。

しかし、ちょっと考えると全く違う。たしかに「主人の務め/主婦の務め」という言い方は成り立つ。

でも「ご主人様」と言っても「ご主婦様」とは言わない。「主人が参ります」という表現はあるが、「主婦が参ります」とはならない。つまり二人称でも三人称でも代名詞にはならない。

どうやら「主婦」という言葉は人格を伴う個人を指すのではなく、「特定の役割」をする人を指していることになる。 >> 「主婦」という概念を疑ってみる。の続きを読む