もう20年ほど前であるが、とある経営者から「お題」を授かった。
それは、組織に関するもので、彼の独自の発想を具現化できないかというものだった。
こんな感じの話だ。
「組織っていうのは、いま野球型からサッカー型になろうとしている。いちいちプレイごとにサインを出すのではなくて、いったんゲームが始まれば選手が主体的に動く。つまりマネージャーは戦略に徹すればいい」
まあ、ここまではわかるが次が難しかった。
「でも、究極の組織はテニスのダブルスみたいなもんじゃないか。高度なプロ同士のチームならマネージャーは不要になる」
まあ、ジャムセッションや室内楽もそんな感じだろう。ただ、これを実際の組織に落とし込むのは相当難しい。というわけで、いろいろシミュレーションしたものの実現するには相当根っこから会社を変える必要があった。
まだ、僕は30代の会社員だったけれど、この頃からピラミッド組織へのアンチテーゼのようなものは増えてきた。海外からもそうした話は入って来て、指揮者のいないオーケストラとかがもてはやされた。
なんでこんな話を思い出したかというと『ティール組織』という本が話題になっていたからだ。この本の世評は高いようだけど、僕の周辺ではちょっと反応が違う。「既視感があるよな」という感じで、人によっては相当にけなしている。
これは、所属組織や年齢の問題ではない。実際に現場の組織改革に取り組んだ経験のある人は、この本について覚めている。
たしかにフレームには説得力がある。組織の進化をカラーチャートのようにして、鴨の羽色に喩えるあたりのテクニックはさすがだ。同じ素材も、ソースと調味料で最新のレシピになるということだろう。 >> 意識高い大人のお子様ランチ?『ティール組織』【書評】の続きを読む