贈る習慣はないが、ついつい見てしまう。「老舗・名店の逸品」とか、「もぎたてフレッシュ便」とかいろいろ工夫が凝らされている中で、「私はずっとここですけど」と静かに主張しているモノたちがいる。
ハムだ。
ハムといっても、薄いハムではない。贈答用のズッシリしたハムだ。日持ちはするし、嫌いな人はまあいない。だから今でも定番なのだろう。しかし、改めて見て驚いた。
ネーミングがすごいのだ。重々しいというか、大仰というか、猛々しいというか。申し合わせたように筆文字だ。そうだ、中身ではなくラベルのデザインもズッシリなのだ。
ううむ、これは「ますらおぶり」とでも言うのか。既に本来の意味から遠い気もするが、外れてもいない気がする。
まず、伊藤ハムは「伝承」だ。しかし、それだけでは弱いと感じたのだろう。「伝承献呈」とある。もう、これは頭を垂れるしかない。そして、黒豚は「黒の誉」だ。誇り高き黒豚の雄姿が目に浮かぶ。
日本ハムは「美ノ国」だ。「うつくしのくに」と読むらしい。ややソフトであるが、もちろん筆文字である。
プリマハムは「匠の膳」に「匠の逸品」と来る。もう、ここまで色々と書いているだけで口の中にはハムのうま味と触感が溢れてくるようだ。
そして、丸大ハムは「王覇」だ。最上級表現は使っていないものの、ここには「勝利」の響きがある。モンドセレクション最高金賞ということもあるのか、どこか誇らしげだ。しかもさらには「煌彩」だ。「きらめき」という文字には、「皇」の字があり、ここにも王道感が漂う。
この2つのブランドの関係は分からないが、「すごい」ことはたしかなのだろう。
でも、なんか引っかかるものを感じる。「煌」という字は、どこかで見た気がする・
そうだ!トヨタのミニバンVOXYではないか!調べてみると、煌はヴォクシーの特別仕様車として、まさにきらめいている。
そして、ヴォクシーといえば「父と子」のCMだ。いまは柳楽優弥のようで、かつては反町隆史だった。しかし、ここでまた既視感がよぎる。
そうだ!「父と子」のCMといえば、「わんぱくでもいい。たくましく育ってほしい」という昭和の名作で、これは丸大ハムだ。
ハムとミニバン。一見関係ないような2つのカテゴリーだが、「父と子」そして「煌」の文字で、深く結びついていたのであった。
そこには、潜在意識をつなぐ何かがあったに違いない。うむ、フロイトが聞いたら何て言うのか。たぶん、「聞かなきゃよかった」ようなことになるのだろうけど。
「名前」というのは、かように奥が深いのであった。