2017年12月アーカイブ

ちょっと気が早い気もするが、なんとなく今年の仕事を振り返ったりしているんだけど、実はお盆の頃から9月いっぱいまでが、稀に見る忙しさだった。7月末から2週間くらい東京を離れて休めたのはよかったのだが、直後に申し合わせたように仕事の依頼が来た。

しかも、「中身の新しい仕事」が幾つもあった。

新たな試みをさせていただくのは、本当にありがたい。飽きっぽい性格で、同じ会社で4つも職種を経験して、40歳でフリーになったくらいだ。ゼロから考えるのは、やっぱり楽しい。

そして、忙しいとはいえ「頼まれる」ということ自体が、「ありがたいなあ」と改めて実感した。考えてみると、社会に出てから30年以上仕事のスタートは「頼まれる」ことで始まっていた。。会社員としてはスタッフ職だし、独立してからはコンサルタント的な仕事だ。

仕事っていうのは多面的なものだ。自分の仕事は、「売る仕事」や「作る仕事」だと思う人もいるだろうけれど、どんな仕事も根っこには「頼まれる」人がどこかにいる。そして僕の場合はオーダーメイドである。

その一方で、忙しくなるほど「いつまでこうして仕事を続けるんだろう」と思うことも増えてきた。

冷静に考えるた時に、フリーランスと言っても「生涯働く」という前提は成り立つとは限らない。自分で「引き時」を決めなくてはいけないと思ってる。 >> 「頼まれない生活」を受けいれられるのかな、と考えたりする年末。の続きを読む



最近、SNSで「男性トイレの個室の混雑」が話題になっていた。

女性の場合と違って、「男性トイレの個室」というのは何をするかが決まっている。まあ、細かくは書かないけどそういうことだ。

つまり、家の外で「大きなことをしたい」わけで、こう書くと「それはいいんじゃないか」と思いそうになるが、そういうわけでもない。「大きなこと」と言っても、そこに大志があるわけではない。

迫りくる現実があるだけなのだ。

会社を辞めて1人で働くようになって13年以上が経つが、最初に気づいたのはこのことだった。

つまり、「家を一歩出たフリーランスに安住できるトイレの個室はない」ということである。会社のトイレというのは、基本的には社員のみが使用できるクローズな空間だ。何の疑いもなく使用していると気づかないが、これはまさに「会社員の特権」じゃないか。

それくらいしないのか?と思われそうだが、結構重要なのだ。

「ノマド」などと気取っていても、本物の遊牧民じゃないから、結局はトイレで右往左往する。

そういうわけで、朝から出る日は早めに起きて、なんというか「憂いを残さない状態」で外出するようにしている。 >> 「トイレ個室難民」と「働き方改革」の関係を論じてみたりする。の続きを読む



考えてみると、この本は絶妙なタイトルだと思う。

「プロ野球ニュース」に「オレたちの」をつけただけで、この本にどんなことが書かれているかがわかる。そして、ターゲットもピンとくる。

「佐々木信也」が思い浮かぶ人、そういう世代であればきっと面白く読めるだろう。メディアの仕事に関わっているならなおさらだ。

プロ野球ニュースは、1976年に始まった。当時中1だった僕にも、この番組が「画期的」だったことはすぐにわかった。

東京エリアの放送は殆どが巨人戦一辺倒の時代に、すべてのゲームを見せる。しかも同録、つまり音付きである。

しかも今回読んであらためて「そうだったのか」と思ったのは、「磁気トラック付きのフイルム」を使っていたということだ。改めて考えると、これは凄い。だって、試合終了からオンエアまでの間に、「現像」して編集までする必要があるのだ。

当たり前のように見ていたプロ野球ニュースだが、いろいろな意味で画期的だったのである。「今日のホームラン」とか懐かしいし、「珍プレー・好プレー」もこの番組から生まれた。

この番組の転換点は、1988年のキャスター交代、つまり佐々木信也の降板だろう。これは、当時のフジテレビにとって大きな決断であり、この本のある意味でクライマックスだ。中井美穂が週末を担当するなど、いままでと大きく番組の方向性が変わったわけだが、時はバブルだ。 >> 卓越したメディア史『オレたちのプロ野球ニュース』【書評】の続きを読む



近所のスーパーで、歳暮のカタログがあった。

贈る習慣はないが、ついつい見てしまう。「老舗・名店の逸品」とか、「もぎたてフレッシュ便」とかいろいろ工夫が凝らされている中で、「私はずっとここですけど」と静かに主張しているモノたちがいる。

ハムだ。

ハムといっても、薄いハムではない。贈答用のズッシリしたハムだ。日持ちはするし、嫌いな人はまあいない。だから今でも定番なのだろう。しかし、改めて見て驚いた。

ネーミングがすごいのだ。重々しいというか、大仰というか、猛々しいというか。申し合わせたように筆文字だ。そうだ、中身ではなくラベルのデザインもズッシリなのだ。

ううむ、これは「ますらおぶり」とでも言うのか。既に本来の意味から遠い気もするが、外れてもいない気がする。

まず、伊藤ハムは「伝承」だ。しかし、それだけでは弱いと感じたのだろう。「伝承献呈」とある。もう、これは頭を垂れるしかない。そして、黒豚は「黒の誉」だ。誇り高き黒豚の雄姿が目に浮かぶ。

日本ハムは「美ノ国」だ。「うつくしのくに」と読むらしい。ややソフトであるが、もちろん筆文字である。

プリマハムは「匠の膳」に「匠の逸品」と来る。もう、ここまで色々と書いているだけで口の中にはハムのうま味と触感が溢れてくるようだ。 >> ハムのネーミングの「ますらおぶり」と、あのミニバンのCMについて。の続きを読む



なかなか癖のあるタイトルだが、西郷隆盛はほとんど出てこない。主人公は徳川から明治の時代を生きた、加賀藩の2人の男である。

島田一郎と、千田文次郎。

2人とも実在した人物で、この時代に詳しい人ならば名を見ただけで「ああ」と分かるかもしれない。僕は迂闊にも名を検索してしまったが、もし知らないのであればそのまま読んだ方がいいだろう。

もちろん小説ではあるけれど、社会背景や事件との関りは事実に基づいて書かれている。そして、その激動の背景にあった人間模様が浮かび上がることで、あの維新の数年間が浮かび上がって来るという仕掛けだ。

明治維新は1868年。それは改元の年だ。しかし、回り舞台のようにクルリと新時代がやってきたわけではない。その前年の大政奉還から王政復古の間にも駆け引きがあり、3年後の廃藩置県までは、まだ「藩はどうにかなるのだろう」という意識もあったのだろう。

だからこそ、中央集権が進むことで下級武士の不満が高まり、あちらこちらでたまったガスに引火するようにして事件が起きていく。 >> 知られざる維新を描く傑作。『西郷の首』【書評】の続きを読む