「プロ野球ニュース」に「オレたちの」をつけただけで、この本にどんなことが書かれているかがわかる。そして、ターゲットもピンとくる。
「佐々木信也」が思い浮かぶ人、そういう世代であればきっと面白く読めるだろう。メディアの仕事に関わっているならなおさらだ。
プロ野球ニュースは、1976年に始まった。当時中1だった僕にも、この番組が「画期的」だったことはすぐにわかった。
東京エリアの放送は殆どが巨人戦一辺倒の時代に、すべてのゲームを見せる。しかも同録、つまり音付きである。
しかも今回読んであらためて「そうだったのか」と思ったのは、「磁気トラック付きのフイルム」を使っていたということだ。改めて考えると、これは凄い。だって、試合終了からオンエアまでの間に、「現像」して編集までする必要があるのだ。
当たり前のように見ていたプロ野球ニュースだが、いろいろな意味で画期的だったのである。「今日のホームラン」とか懐かしいし、「珍プレー・好プレー」もこの番組から生まれた。
この番組の転換点は、1988年のキャスター交代、つまり佐々木信也の降板だろう。これは、当時のフジテレビにとって大きな決断であり、この本のある意味でクライマックスだ。中井美穂が週末を担当するなど、いままでと大きく番組の方向性が変わったわけだが、時はバブルだ。 >> 卓越したメディア史『オレたちのプロ野球ニュース』【書評】の続きを読む