2017年12月アーカイブ
なかなか癖のあるタイトルだが、西郷隆盛はほとんど出てこない。主人公は徳川から明治の時代を生きた、加賀藩の2人の男である。
島田一郎と、千田文次郎。
2人とも実在した人物で、この時代に詳しい人ならば名を見ただけで「ああ」と分かるかもしれない。僕は迂闊にも名を検索してしまったが、もし知らないのであればそのまま読んだ方がいいだろう。
もちろん小説ではあるけれど、社会背景や事件との関りは事実に基づいて書かれている。そして、その激動の背景にあった人間模様が浮かび上がることで、あの維新の数年間が浮かび上がって来るという仕掛けだ。
明治維新は1868年。それは改元の年だ。しかし、回り舞台のようにクルリと新時代がやってきたわけではない。その前年の大政奉還から王政復古の間にも駆け引きがあり、3年後の廃藩置県までは、まだ「藩はどうにかなるのだろう」という意識もあったのだろう。
だからこそ、中央集権が進むことで下級武士の不満が高まり、あちらこちらでたまったガスに引火するようにして事件が起きていく。 >> 知られざる維新を描く傑作。『西郷の首』【書評】の続きを読む