「AIスピーカー」が続々発売されるという。というかされている。
ここに来て、パナソニックとソニーが新製品を発表した。LINEのWAVEも既に発売されている。
ただし、ニュースになっているのは日本企業が動き出したからであって、海外では相当「あたりまえ」になっている。Google Home vs. Amazon Echoのような動画はたくさんあって、見ていると何となくイメージがわかる。評価する方も、両社に気を遣っているような感じだ。
で、このニュースは日経も熱心に取り上げているんだけど、一つ気になったことがある。それは「AIスピーカー」というカテゴリーになっていることだ。調べてみると、日経以外のメディアでは「スマートスピーカー」が多いようだ。
しかし、ふと気になる。この製品は「スピーカー」なのか?
たしかに、スピーカーなんだけど、彼らは話を聞いてくれる。いや、ついつい擬人化したくなるけど、それこそがこの製品のユニークさじゃないか。
ちなみに、僕が仕事をしている中で、この手の話に詳しい人はたいがいVPAと呼んでいる。Virtual Personal Assistantの略で、アップルのSiriやアマゾンのAlexaのように音声コミュニケーションによるサービス全体を指している。
ちなみに日経記事で「VPA」を検索すると、海外記事を翻訳した一件がヒットするだけだ。
というわけで、「スピーカー」と言われているものは、そのシステムの一部だ。でも、それをスピーカーと呼ぶと、本質が伝わらない気もする。
英語のサイトを見ても、たしかにsmart speakerが多いようだけど、smart assistantという言葉もあるし、いずれ新しいカテゴリーネームができるのだろう。
でも、「スピーカー」じゃないと思うんだな。
なんで、そこにこだわるかというと、「スピーカー」というだけで「ああ、そうか」と思っちゃうだろうし、その勘違いがいろいろ影響してくると思うのだ。
スマートフォンを「立派な携帯」と思ってた企業は、その後いろいろと痛い目にあった。もっとも新しいカテゴリーのものが登場すると、どうしても過去の知識をもとに類推する。自動車が出てきた時は「馬なし馬車」という言葉があった。日本語にすると「馬から落馬」とはまた趣の異なる語義矛盾のようだけど、もとはhorseless carriageだ。
あの商品は、スピーカーの機能を持っている製品定義としてはそうなのかもしれない。でもその価値の本質は「アシスタント」なんだから、メディアも言葉を変えた方がいいと思う。
VPAが馴染まなきゃ「仮想執事」でも「ヴァーチャルメイド」でも、なんか今どきの日本らしくしてもいいしさ。
と思ったら、ソニーの幹部はこのようなことを言っている。
「スマートスピーカー、AIといいながらも、最終的には音を聴くのが最大の楽しみ。ものづくりの思いを込めた商品であり、音質に自信を持っている。」
う~む。「いいながらも」っていうけれど、そう「いってる」ことが大切だと思うんだが。