【読んだ本】ジョシュア・ハマー著/梶山あゆみ(訳)『アルカイダから古文書を守った図書館員』紀伊国屋書店
私たちは、本当にイスラム文化のことを知らない。いや、そうやって勝手に「私たち」としてしまうのは、ちょっと強引かもしれない。でも、少なくても僕の知識なんかは相当適当だ。
そして、アフリカを舞台としたイスラム文化史のこととなると、過去はもちろん「いま何が起きているのか」もあまりに無知であることを痛感した。
ヨーロッパで印刷革命が起きた16世紀には、アフリカでは多くの書物が存在していた。それは、おもに個人の手で保管されてきたが、1980年代以降に徐々に収集されて、やがて図書館が建設される。
このノンフィクションの舞台は、西アフリカのマリ共和国のトンブクトゥという都市で、主人公はアブデル・ハデル・カイダラ。彼は研究者だった父の仕事を受け継ぎ、若い頃から国中を行脚して古文書を集めていく。まず、その苦労話から物語は始まる。
やがて収集が進み、米国の財団からの援助もあり図書館をつくる。文芸書から法学、あるいは天文学や医学にいたるまで実に幅広いカテゴリーの書物がアフリカにはあった。
それは長いこと埋もれ「ないもの」とされていたのである。
本書ではあるイギリスの歴史家が1963年にBBCのインタビューで語ったことが引かれている。
「あるのはアフリカにおけるヨーロッパ人の歴史のみ。それ以外は、闇が広がるばかりだ」
そんな“常識”を覆して、新たな文化の歴史を文字通り「発掘」していくのだが、やがてアルカイダの勢力がこの国にも広がっていく。 >> 寛容なイスラムを知るためにも『アルカイダから古文書を守った図書館員』【書評】の続きを読む