2017年07月アーカイブ

平尾昌晃氏が旅立たれた。

あれだけの曲を作っていただけのことがあり、見出しもさまざまだ。「カナダからの手紙」というメディアもあったが、個人的には「瀬戸の花嫁」かな。

1972年というから、小学3年生の時だ。

「瀬戸ワンタン しぐれ天丼~♪」という替え歌が流行っていたが、ネットで調べると微妙に違うバージョンがありながら、結構広く歌われていたらしい。エリアごとに違ったりするのか、柳田國男が生きていたら調べてくれたんだろうか。

改めて小柳ルミ子の歌を聞いて楽譜を確認すると、なるほどなと思うことがあった。

「瀬戸は」の“は”や、「しぐれて」の“て”は、二分音符だ。しっかり伸ばすことになっている。

しかし、実際の歌は違う。伸ばすこともあれば短めに余韻を持たせることもある。だから、その隙間に何か食べ物の名前を入れることを思いついて、あの替え歌ができた。

言葉に余韻を持たせた作曲だからこそ、誰にでも口ずさめる名曲になった。そして、演歌でもポップスでもないメロディーを作り出したのだから、やはり時代を読むカンも鋭い人だったのだろう。

ただ、この歌詞の世界が「ちょっと古いんじゃないか」というのが、子ども心にも感じていた。 >> 「瀬戸の花嫁」をマーケティング的に語ってみる。の続きを読む



新入社員が職場に行って戸惑うことの一つに、「なぜそのようなやり方で仕事をするのか分からない」という問題がある。

この原因は2通りあって、「不合理な方法が慣習となっているためにまともな新人が疑問を抱く」というケースと、「単に新人の理解力が低い」という場合がある。で、後者の場合は、彼らが賢くなってもらうのを待つしかないが、問題は前者のケースなんだな。

職場というのは長い間に、どうでもいいような仕事の習慣が雪だるまのようになっている。雪だるまなら、まあ可愛いし放っとけば溶けるからまだいい。なんかもっと、ドロッとして硬化したような成分のような感じの「何か」だ。

新入社員というのは、結構純粋な嗅覚を持っている。だから、彼らの疑問は結構正しい。そして、時には「なぜですか?」と質問する。

こういう時に、ちゃんと理由があれば答えられる。新人から見て不合理なことにも、ちゃんと背景があれば「聞いて納得」ということになる。

一方で、「なぜですか?」は痛いところを突くこともある。そうなると、「いちいち聞くな」「いいから言った通りにやれ」ということになる。何かダメな部活のようだが、それと同じくらいダメな職場も多い。 >> 「なぜ?」を嫌う職場は、気を付けた方がいい。の続きを読む



直木賞が発表された。今年はたまたまだけど、事前に候補作を2作読んでいた。

以前に書いた『会津執権の栄誉』と、もう一冊は宮内悠介『あとは野となれ大和撫子』(角川書店)だ。

中央アジアのアラルスタンという国を舞台に、少女たちが活躍するエンタテインメント。冒険小説でもあり青春小説の香りもするけれど、そういう枠には入らない。やっぱり「エンタテインメント」としかいいようがない。

宮内悠介氏はSFというイメージが強いが、近著の『スペース金融道』は、「宇宙を舞台にした消費者金融」という設定で全体のトーンは軽い。とはいえ、設定がしっかりして、構成も凝っている。

この小説も、まず「アラルスタン」という設定がおもしろい。架空の国なんだけど、地図が書かれていてウズベキスタンやカザフスタンの近くのようだ。で、このアラルスタン。気づく方は気づくかもしれないが、「アラル海」の地に生まれた国なのだ。

実際のアラル海について、調べていただければわかるだろうが、かつては広大な内海だった。それが、旧ソ連の灌漑で干上がってしまう。

実際は塩を含んだ地で荒れているのだが、小説上はその地に国家が生まれている。しかし、そこには当然ながら「仕掛け」があり小説全体に影響する。 >> 直木賞残念!でも『あとは野となれ大和撫子』は楽しいよ【書評】の続きを読む



ふと思い立って春の連休に『戦争と平和』を読もうと思い立った。なぜそう思ったのかわからないのだが、読み始めたのは結局5月4日だった。

若い頃に躓いているのだが、どこで躓いたいのかもわからない。ほとんど、初読のようなものだ。

当然「連休に読む」などということ自体が無理な話で、読み終わったのは7月15日だった。

kindleで読んだのだが、文庫だと一巻あたり500ページ以上あって、全部で3000ページくらいなんじゃないか。『戦争と平和』以外にも30 冊ほど読んでいたので、2ヵ月ちょっとで読めたのは上出来な方かもしれない。

読み終わってみると、思ったよりも面白かった。子どものような感想だが、まずはそう感じる。そして、子どものような感想の続きを少々。
まず、タイトルをわかりやすく書き換えると『戦争と宴会』かもしれない。この小説は、ナポレオン戦争時のロシア社会を描いているが、出てくる人のほとんどは貴族だ。

そして、戦争シーン以外は貴族の日常であり、そのほとんどは宴会のような感じだ。あとは狩猟とかオペラとか。まあ、宴会というほどじゃなくても、家の中でメシを食いながらああでもないこうでもないと話してる。

ワインを飲むシーンもよくあるが「ドライマディラ」や「ラインワイン」に「ハンガリアン」とかも出てくる。さすがに、ナパバレーとかは出てこないけれど、よく飲んでいる。 >> 『戦争と平和』を読んで~ちょっと子どものような感想だけど。の続きを読む



暑い週末だった。

日曜は17時からの渋谷らくご、月曜の午後はインバルと都響で「大地の歌」。考えてみると、「海の日」に「大地」だったのか。とはいえ、この日にドビュッシーをやるようなベタな企画はさすがにないんだろう。

都内の道は空いていて、東京ならではの連休だった。

で、愉しめたのが渋谷らくご。どうも行きたい時と日程が合わずに初めての経験だった。演目は、こんな感じ。

瀧川鯉斗「転失気」

立川こしら「壺算」

春風亭柳朝「お菊の皿」

春風亭昇々「千両みかん」

鯉斗はこの演目を“修行中”という感じで、柳朝はやや大人しい。というわけで、こしらと昇々が場をさらった感じだった。たしかに、おもしろい。そして、よく考えている。 >> 7/16渋谷らくご~こしらと昇々の勢いが楽しい。の続きを読む