若い人は、いろんなことを知らない。まあ、それはある意味当然なわけで、歳を重ねれば知識が増えるのが道理のはずだ。だから、「知らないこと」自体に驚いたり、まして批判したりしてもしょうがないとは思っている。
ところが、最近は学生や20代の若い人と話すと、「エ?」と思うことが増えた。
日本がアメリカと戦ったことを知らないとか、ウナギイヌを見たことない、とかそういうんじゃない。
普通のブランド名を知らないのだ。
「知っている自動車メーカー」というと、まずトヨタが挙がる。「高級なクルマ」というと、「ベンツやBMW」というのも知っている。ところが、他のメーカーになると怪しい。
「スバルってマツダが作ってるんですか?」というような話になっても、別に普通で驚かなくなった。
「自宅にあるウィンドウズPCはどのメーカーか?」
これも、結構怪しい。親が持っていたりするのを使うこともあって、それは「ウィンドウズ」なのだ。最近だと日本メーカーとは限らない。そして、富士通やNECなどの企業イメージもほとんど薄い。「mac bookとそれ以外」という感じだ。
なぜか?と考えてみると、そもそも「ブランド認知」の機会が減っている。それは、テレビを見ていないことが大きいと思う。この辺りは横山隆治さんの『新世代デジタルマーケティング』に詳しいが、彼らに「知ってもらう」のは本当に大変だ。
高校生になったくらいからテレビへの接触が急減する。彼らの世代に、ブランドを認知させるのは実は相当難しいだろう。それに、ブランドを知らないことは全く恥ではない。だって、周りも知らないから。
自宅のクルマやパソコンのメーカーを知らないっていうのも変ではなくて、だって普通の大人でも、「自宅のガスコンロのメーカー」ってすぐわからないんじゃないか。低関与になれば、そんな位置づけなのだ。
となると、いざクルマやパソコンを買う時はどうなるか?初めて検索して、クチコミを参考にしたり、詳しそうな人に聞く。もちろん、その時点で知られているブランドは優位だろうが、そのまま購入されるとは限らない。
ちなみに、飲料や菓子などは、結構知っている。それは子どもの頃にCMを見て「自分事」として覚えている上に、コンビニという接点があって情報が更新されるからだ。でも、ビールとなると、どれが発泡酒で、何が新ジャンルだか怪しい。
飲食などの消費財は、個別ブランドよりもコンビニの店舗が、保証作用を担っているわけで、考えてみると「セブンイレブンでまずいものを食べる」というのは、相当に至難じゃないか。そうなると、個別ブランドには拘泥しなくなるし、認知よりも棚にあることが大切だ。
テレビCMはネットの時代になって旗色が悪い。でも、頑張っておもしろいクリエイティブを作れば、無名のブランドでも知られることで売れたのだ。黎明期には、規模の小さな会社がCMを流して成功した例も多い。
ただ、これから「新しいブランド」を知ってもらうのは本当に難しいだろう。
そうなると、アマゾンのような発想はよくわかる。商品知識を知らない人は、お薦めでOKとなるだろう。まして、日本の製品は飲食に限らずどれも質が高い、というか「何だこれは!」がどんどん少なくなってるから、ブランドへのこだわりは減っていくと思う。
その先の一手が「アマゾンエコー」となり、買い物の探索コストはますます低減される。
ちなみにトヨタの知名が盤石なのは、数年前のドラえもんのシリーズが効いているのかもしれない。というのも、毎年講義でおこなうレポートでもあのシリーズは、相当人気だったのだ。
でも、将来のメーカーは「グーグルカー」や「アマゾン冷蔵庫」へのOEM生産が仕事になるのかもしれないなぁ。