本屋大賞は、直木賞だった。初の「ダブル受賞」ということで、それだけの作品なのだろうけれど、じゃあ本屋大賞って何のためにあるんだろうか。
その趣旨を見ると「売り場からベストセラーをつくる!」とある。でも、「蜜蜂と遠雷」は既にベストセラーだろう。「売り場から」というのは、いわゆる文学賞とは一線を画したいという志だったんだろうけれど、直木賞と「ダブル」なのだ。
もともとは、「プロの目で面白い本を紹介する」ということが趣旨だったんだろう。ところが、近年になって単なる販促キャンペーンにしか見えない。仕方ないといえばそれまでだけど、それが文学界にとってどうなんだろう。
一方で、昨年の受賞作を読んだときは思わず唸ってしまった。「ウウム」と唸るのは、感心した時もそうだけど、逆の時もあって、これは逆の方だ。本の批判をダラダラ書くのは気が進まないけど、とにかく登場人物の行動に必然性がない。心の底にある動機がみえてこない。
そういえば、最近の小説だと『羊と鋼の森』もそうだが、『暗幕のゲルニカ』も唸った。中学生の頃に読んだ五木寛之の小説を思い出す。そうか、中学生だったらいいのかもしれない。
まあ、そういう声があったからかどうかはわからないが、今回の受賞はあまりにもわかりやすく「勝ち馬に乗る」という感じだ。
このまんまだと、本屋大賞は書店をますますつまらなくしていくように感じる。
書店、とりわけ実店舗は厳しいという。でも理由はわかる。僕が本を買うのに実店舗まで行く機会が減った理由は単純だ。
特定の本だけを、やたらと推すからだ。つまり多様性がないから発見がない。探し方が悪いのかもしれないが、レイアウトが単調で結局は端末で検索する。
だったら、ネットの方が便利で発見も多い。
書店が、スーパーマーケットの「大陳」のようになっているのだから、「本屋大賞」がこういう選択になるのも止むをえないのだろう。そもそも、書店員の読んでいる本が売れてる本だったら、こうなるはずだ。
だとしたら、売り上げランキング発表しておけばいいだけの話だ。やっぱり、この賞の意味はよく分からなくなってると思う。
※というわけで、読書について懐疑的になったら改めて読んでみたいのがこの一冊。僕は新訳をおすすめしたい。