2017年04月アーカイブ

食べ物についての本ってあ、レシピやらダイエットやら店ガイドなどの実用的なものを除くと、意外に面白いものが少ない。

食についての関心は高まっているとはいえ、「おいしいくて安い店をいかに探すか?」とか「どうしたら効率的に痩せられるか?」といったところで止まっているのかな、と思うことがある。

最近読んだ『カリスマフード 肉・乳・コメと日本人』(畑中三応子・春秋社)は、何となくみんなが気にしている3つの食材について文化的な側面から歴史を追って掘り下げた本だけど、なかなか面白かった。

この3つの食材は、いろいろな意味で話題になりやすい。肉と牛乳は明治以降に広く食されるようになったが、米は古代からの主食だ。そして、健康をめぐる俗説も多い。

肉や牛乳も実は結構前から飲食の歴史はあるようだが、その辺りについてもいろいろと書かれていて興味深いし、特定の食べ物がバッシングされる経緯を見ると、日本人は食に対して関心が深い一方で、ちょっとヒステリックはないかと感じることもある。

で、この本でおもしろいのは、どの食材にも福沢諭吉が顔を出すことだ。

まず、肉と牛乳だけれども、福沢は奨励者だった。以前、江戸東京博物館での展示でも見たことがあったけれど、彼は食についても欧化を良しとしていたのだ。

そして、あの妙に拡張の高い文章でかつユーモラスに食を論じる。

『肉食之説』という、いわゆるPR文では「肉食を穢れている」とする人に対して、こんな風にユーモラスに説いている。

「(とはいっても)世の中には不潔な食べ物が多い。蒲鉾は溺死人を食った鮫の肉でつくるし、春の青菜は香り高いが一昨日かけた小便が葉に深くしみ込んでいる。周期があるといえば、カツオの塩辛もくさやの干物も」といった塩梅なので、たしかにスッと説得されるかもしれない。 >> 『カリスマフード』を読んで感じた、福沢諭吉と「食」の縁。の続きを読む