2017年02月アーカイブ

米国のいわゆる「入国制限令」には驚いたけれど、今日のニュースでその賛否を問う世論調査の結果があってさらに驚いた。

賛成が49%で、反対が41%だ。「賛否分かれる」という見出しのメディアもあるが、この差は想像以上に大きい。ロイターの調査でサンプルも十分にある。

基本2択の賛否調査だと、昨年の英国のEU離脱や米国大統領選を思い出すが、もっと競っていただろう。

NHKのニュースサイトには慶大の渡辺靖教授のコメントがあるが、これが興味深い。

「アメリカで起きている抗議デモなどを考えると49%が賛成というのは意外だが、調査のやり方に問題がないとすれば、自国の安全に対するアメリカ国民の憂慮の現れではないか」

氏のコメントはいつも比較的ニュートラルな印象があるけれど、わざわざ、「調査のやり方」にまで言及しているあたり、驚いているようだ。同時期のギャラップの調査だと支持率より不支持率の方が高いので、政策への賛否とはまた別の構造になっているのだろう。

そして、共和党支持者の51%が「強く支持」で、民主党支持者の53%が「強く反対」ということも、伝えられている。

ただ、それならどうしてここまで賛成が多いのか?ロイターのサイトに行くと、手掛かりがあった。

まず、全体が1201人で、民主党支持者は453人で共和党支持者は478人。やや共和党支持者が多いが、問題はここではない。

「賛成:反対」の比率を見てみよう。

共和党支持者は82:13。「どちらとも言えない」が5%。

民主党支持者は23:70。「どちらとも言えない」が7%。

つまり、民主党支持者の中にも今回の入国制限を賛成している人が、20%以上いて中間を含めると3割になる。この「揺れ」が全体の差になっているのだ。

さらに「安心感が増した」は全体で31%にとどまり、逆は26%。この質問についてはそもそも「どちらとも言えない」が43%に上る。

つまり入国制限令自体は「やってよかったんじゃない」が民主党支持者にも一定数いる一方で、効果については全体的には懐疑的という感じだ。

他社の調査データもそのうち出てくるだろうが、いずれにしてもこれが米国全体の空気感なのだろうし、少なくても報道で伝わる感じとは相当異なる。

先の渡辺氏がいみじくもコメントしていたが「抗議デモ/集会」のニュースはそうした錯覚の一因になりやすい。もちろん、それが政権をひっくり返す勢いになることもあれば、結果的には「一部の行動」が過剰に拡大されることもある。

日本でも一昨年の安保法案の時は、相当デモや集会があって内閣支持率も低下したが、その後は回復した。一方で韓国の抗議活動は政権を崩壊させている。全体の縮図かどうかは、それぞれなのだ。

いずれにしても、「デモ/集会」のニュースは、気を付けて見た方がいいと思う。メディアの気分は、もしかしたら冷戦崩壊の四半世紀前から変わっていないのかもしれないが、あの時はインターネットもなく、現在ほど世論は複層的ではなかった。

米国民がこぞって反対しているように報じれば、この調査結果をもとに「報道は嘘だ。国民の多数派支持してる」とtwitter攻撃のネタにされるだけかもしれない。

デモや集会に参加していない人たちが何を考えているのか。そこを深く知り、考える必要があるのだろう。

そう思うと「米国は移民の国」のような観念論で、問題は解決できるのか?それは「日本は侍の国」とどこが違うのか?この辺りの冷静な議論としては、三浦瑠麗さんのこちらのエントリーが、とても説得力があった。

いずれにしても、大統領の政策に嘆きつつも、報道に対しても覚めた目を持たなくちゃいけない。ああ、大変だ。

そして、ついつい猫動画でも見たくなる。あれが流行るのも本当によくわかるよ。