先日、自宅に近い駅を通ったら警察が非常線を張って歩行者の通行規制をしている。パトカー、救急車、消防車まで出ていて「ああ、事故なんだな」と思って見たら歩道にタクシーが乗り上げていた。
提灯でもカタツモリでもない「かまぼこ」のような行燈のクルマだ。
後でニュースを見ると、運転手と一名の通行人が負傷したようだが、この事故後の印象だと「幸運だった」と思う。駅前の信号にぶつかっているのだから、ほぼ一日中人が多いところだ。
運転手は50代ということで、その後の詳しい情報はわからない。最近はこうした事故が結構多く、原因もさまざまだ。そういえば、福岡の病院での事故も個人タクシーだった。
ただその光景を見ながら、ここ最近タクシーに乗る時は「個人」を避けていることを思い出した。
いま、仕事をする時は基本的に電車で移動する。ある程度の歳になると、タクシーに乗るのは「カネを払って脂肪を買う」ようなものだと思ったからで、歩くようにしてるからだ。
ただ、昨年前半のことだが、妻が脚を痛めた。膝が殆ど曲がらない状況で、杖なども使っていたこともあり、ちょこちょことタクシーに乗った。
そこで、一度怖い目にあった。僕が先に乗って、妻が乗るのを待っていたのだが運転手が確認しないでドアを閉めたのだ。
曲がらない脚をドアが押すことになり、思わず悲鳴を上げて気づいたのだが、謝ることもなく走り出す。幸いにして、それで症状が悪化することもなかったのだが、場合によっては悲惨なことになっていただろう。
それが個人タクシーだった。
その後、何回もタクシーを利用したが、「少しお待ちください」とこちらから声をかけるようにした。ただ、運転手は状況を確認してからドアを閉める。別にこちらから何も言わなくても、それが基本動作なのだ。
その時の運転手は相当高齢だったが、そんな話を人にすると「個人タクシーには乗らない」という人が結構いて、積極的に乗る人はいない。電子マネーもアプリも使えないし、何よりもヒヤリとする経験があるからだという。言われてみると、個人タクシーの運転手はバラつきがひどい。
会社に入ってからしばらくの間だが、深夜になると基本的には個人タクシーが客待ちの列をつくっていた。まあ、そういう棲み分けなのだろう。ただ少なくても、それは社員に歓迎されていた。「個人タクシーは質が高い」というイメージがあったのだろう。それが、気づいたらここまで負のイメージが強くなってる。
そもそも、開業にはそれなりの経験や技能がいるはずだ。
普通、「組織→独立→個人」となった場合は、安定が得られないのだから、スキルを磨かなくてはいけない。ただ、既得権益になっているなら、ズルズルになることもあるわけで、タクシーはその典型なんだろう。
ブランドとしての「個人タクシー」は、昭和に隆盛を誇った老舗だ。そして、知らないうちにイメージが悪くなり、やがて寂れてしまった旅館や飲食店のようになるのかもしれない。