「働き方」の問題は、すべての働く人の問題だ。しかし、今回の事件は「広告業界特有の課題」も浮き彫りにしたと思う。
それは、SNS上などで広告関係者がいろいろな意見を述べたことが大きいだろう。同じことが仮に金融業界で起きたとしても、こうはならなかったと思う。
内容はさまざまだが、メディアや世論が電通を「断罪」することについて「ちょっと待って欲しい」という気持ちのものも目立った。それについては、僕も理解できる部分はある。現状を深く知らないで、「ブラック」と囃し立てる人々を決して賢いとは思わないし、彼らが建設的な議論をしているように感じない。
一方で、「広告にはいろいろそれなりの事情があって」という話も、細かく詰めていくと危うさを感じるところがある。
たとえば、広告会社は“発注される側”で、その内容に無理があれば時間だって大変になる、という声もあった。
それは、実態としてはそういう発注元もあるだろう。しかし、あくまでも「企業対企業」の取引である。しかるべきポジションの人どうしが、なぜ契約をしないのか?SLA(service level agreement)のような発想も必要なのかもしれない。
また、「広告のアイデアは工場の生産とは違う」と言う人もいる。クリエイティブはもちろん、マーケティングのコンセプトメイキングも「よりいいもの」を求めれば、それなりの時間が必要なことはたしかだ。 >> 【働き方再考】クリエイティブには「無限の時間」が必要か?の続きを読む