東京の「小ホール」って、充実してるなあ。
(2016年11月15日)

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11.15ステファン・シュトロイスニック ピアノ・リサイタル

2016年11月15日19:00 ヤマハホール

F.シューベルト/4つの即興曲 第2番 変イ長調 Op.142 D935
F.シューベルト/ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960
R.シューマン/幻想小曲集 Op.12 より1.夕べに 2.飛翔 3.なぜに
F.リスト/ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178 R.21

(アンコール)

F.シューベルト:4つの即興曲集 Op.90 D899 第3番 変ト長調

 

今年になってからヤマハホールのピアノリサイタルは3回目だ。

3月のティベルギアン6月のガブリリュク、そして今回はシュトロイスニックと、共通点としては、とにかく名前が覚えにくい。

シュトロイスニックは、30を過ぎたばかりでこの世界では「若手」ということだろう。ヤマハホールは、謳い文句にあるようにピアノとホールが一体となった響きが魅力的だ。ただし、これは時に「音像が曖昧になる」という可能性もある。

前半のシューベルトはそうした傾向が出ていたと思う。ソナタの一楽章のジワジワと湧き立つような主題が、いま一つ前に進んでいかないような感じがする。奏者も、ホールの響きを捉えきれず、ペダルなどに試行錯誤があったのかもしれない。

3楽章くらいから、吹っ切れたようになったが、後半のリストの響きは美しく芳醇だったと思う。

ただし、全体的に抑制的でもう少し“弾ける”雰囲気があってもいいのにな、と感じた。

東京は2000人から3000人ほどのホールが改修などで足りないと言われているが、室内楽向けの小ホールは相当充実している。

カザルスホールは残念だったが、紀尾井、トッパン、浜離宮、王子などの他に大ホールに併設されている小ホールも多いし、東京文化などはその空気感も含めていつ行っても素晴らしいと思う。紀尾井などは800人ほどで小編成のオーケストラも想定しているが、ヤマハや王子のように300人前後で室内楽に徹しているホールなど、バリエーションもいろいろだ。トッパンの主催公演もユニークだ。

ヤマハホールは、ピアノでは独特の魅力がある。ビルの上にあって、その辺りの動線はいま一つだがスタッフがいつも大変に丁寧で気持ちいい。

ただ、このホールの最大の問題は銀座の一等地にあることかもしれない。

平日の夜、ことに1人で行った時は、終演後に周りの華やかさと楽しそうな人々の間で、どこか浮いてしまうのだ。歌舞伎の後だと、あの喧騒がちょうどいいんだけど、室内楽の後は、紀尾井のようにもう少し静かな方がいいかな。

まあ、それも東京に暮らす贅沢な悩みではあるんだけど。