今年の3月に京都へ行って、大徳寺、妙心寺、相国寺などの禅寺ばかりを回った。冬の特別公開目当てだったこともあるが、どこも落ち着いて静かで堪能できた。
金閣や清水寺は外国人観光客も多く、相当にごった返しているという。その一方で、禅寺は地味だし、訪れるのはリピーターだろう。
しかし、禅宗美術の名品はなかなかに味わい深い。障壁画や襖絵などを巡り、庭で一息ついていると、これが京都めぐりの楽しみだなぁとつくづく思う。
その時に、「禅」をテーマにした展覧会が京都から東京へ巡回することを知った。最近の和物の展覧会は相当に混雑するので、初夏の京都へ行こうと思っていたのだが調整がつかず、東京で観ることにした。
日中はシニア層で相当に混むので、金曜の17時を狙う。20時まで空いている日は、この辺りが谷間になるのだ。
ところが、東博に行ったら拍子抜けするほどに空いている。おかげで、すべての作品をじっくり間近で見ることができた。ふと、周りを見ると女性客が少ない。たしかに、坊さんの掛け軸が並んでいるようなコーナーも多く、展覧会としての華はないかもしれない。
そして、ここにいる男性客が、そのままサントリーホールのブルックナーのコンサートにいても違和感がない。そんな雰囲気だ。
そういえば、展覧会で妙に坊主刈りというかスキンヘッドの人が多いなあ、と思って気づいた。実はけっこう僧侶も来ているのだろう。スキンヘッドではなく、剃髪された方、だ。
というわけで、内容について一言でいえば、全国の禅寺や博物館からお宝オールスターが終結したような展覧会だ。内容的には、とても充実している。
そして、行くのなら今からがお薦めだ。
というのも、11/8から後期展示になって一部が入れ替わっているのだが、雪舟の「慧可断臂図」や、退蔵院の「瓢鮎図」(右のポスター)の展示がスタートしているのだ。
個人的には、特に瓢鮎図をじっくり見たかった。以前「瓢鮎図の謎」という本を読んだのだが、退蔵院にあるのは模写で、博物館で見る機会もそうそうない作品なのだ。
そして、この両エースに加えて、なぜか若冲の作品が2点「特別展示」ということで、出口近くに飾られている。
文脈としてはやや不明なのだが、もしかしたら動員が想定を下回っていることで「助っ人投入」ということなのか?とも想像する。
でも、この展覧会を見逃すのはもったいないと思うよ。
会期はあと2週間。禅は急げ。