コソコソと定時退社をしていた記憶。
(2016年10月13日)

カテゴリ:キャリアのことも

広告代理店に新卒で入社して、最初の配属はクリエイティブだった。30歳の時に希望を出して、研究開発セクションに異動したのだけれど、あれは大きな分岐路だったとつくづく思う。その後、ブランドコンサルティングと人材開発の仕事をして40歳で会社をやめた。

異動の希望理由はいろいろ書いたのだけど、それ以上に大きかったのはクリエイティブがあまりに忙しかったことだ。

結婚した直後だったが、もう真っ当な生活ができない。人によって差はあるだろうが、僕としては毎日深夜になるのは耐え難かった。いまでもそうだが、早い時間から家でダラダラとメシを食うのが好きなのだ。

とはいえ、そんなことを言ってどうにかなるわけでもなく、とりあえず仕事をしているうちに異動となった。

研究開発セクションは、時間的にはそれ程過酷ではない。基本的には個人が勉強して考えたことを組み立てていくので、緊急の無茶な要請に応えることもない。ただし、圧倒的に孤独ではある。

そして、異動の直後は相当時間があって「とにかく勉強して課題を見つける」ことが求められたのだが、仕事自体はみんな早く終わる。

ほぼ定時に帰ることもできて「ああよかった」と思ったのだが、そうはいかないのが人の心理だ。

異動したセクションは、クリエイティブとは隣のブロックのビルだった。退社して地下鉄の駅まで行く途中に、以前通ってたビルの前を通る。もちろん、クリエイティブや営業の社員と顔を合わせることになるのだが、これが何だか気まずい。

「エ?もう終わり」と口には出さないが、何かそういう空気を感じた。

そこで、しばらくは元のビルの前を通らずに、避けるように遠回りして帰路についていた。

なんだか、自分が情けなくなるような思いだったけれど、それはそれで良かったと思っている。

「ちゃんと仕事して、堂々と定時に帰るようになる」と、はっきり意志を持つことができた。周りの空気に流されないで、自分のことを考えるきっかけになったと思っている。

その後10年間ほど会社勤めをしたが、時間に追われるたり寝不足になるようなことは殆どなかった。

コンサートや芝居にも結構行ったが、行けなかったことはないし、終演後に会社に戻ったのも一、二度くらいだったと思う。

チームで仕事をする上での「協調性」は大切だと思うが、職場の空気に合わせる「同調性」はほどほどにしておいていい。

でも協調性と同調性の違いがわからないままに、ズルズルになっている職場はまだまだ多い。

そして、働き方は自分の価値観で決めるしかないんだなと改めて感じる。

コソコソと定時退社をしていたことだって、それなりの糧になったんだなと思う。