ポストイットに罪はないけど、「ワークショップ」は要注意。
(2016年8月29日)

カテゴリ:キャリアのことも,マーケティング
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社内の風景は会社によって、結構ちがう。

そして、会議室の雰囲気は、まさに風土を表していると思う。一番わかりやすいのは「壁」じゃないだろうか。

広告会社は、僕が入社した30年前から(と書いて今年で卒業30年であることに初めて気づいて驚いた)、壁は「使うもの」だった。

とにかく、何かを貼る。企画だったり、切抜きだったり、壁はキャンバスみたいなのものだった。

つまり「みんなでワイワイ考える」ことが、はなから当たり前だったのだ。

そういう雰囲気は、まだ他の業種では少なかったけど、段々と当たり前になった。コピー機付きのホワイトボードなどが広まった。六本木ヒルズができた時に、たしか壁面をボードにしたような部屋があったと思う。

そして、いろんなところで「ポストイット」が普及した。小さいものを栞にするのではなく、大きめのものに書き込んで持ち寄り、分類していく。いわゆるワークショップの技法も一般的になったが、この普及には広告業界の関係者も相当関わっている。

ことに地方自治体などにも持ち込んだようで、「村おこしの会議に集まった青年団」とかのニュースを見ても、ポストイットがペタペタだ。それが「民主的」だと布教をした人がいたのである。

ただし、最近は相当副作用が強いんじゃないだろうか。

僕も、研修やワークショップの仕事では、このようなペタペタを取り入れることがあるけれど、「環境分析」までで止めることを原則にしている。将来については、シナリオ上で「あり得ること」ならば書いてもいいだろう。

ただし、やってはいけないのは「アイデア」を思いつきでペタペタすることだ。そういうワークショップをやると、参加者の満足度は上がる。ただし、アイデアが匿名になり、それをつぎはぎして、玉虫色のアウトプットになる可能性が高い。

結局は、だれも責任をとらない話になりやすいわけだ。

そうしたワークショップの成果をを見せてもらうことがあるが、その後に全く進んでいないことが結構多い。つまり、みんながちょっとずつ満足するガス抜きになっているのである。

広告会社の企画会議は、手ぶら禁止の持ち寄りだった。(たぶん今でもそのはず)

だから、ペタペタ貼っても、それはトーナメント大会で、また個人作業でアイデアを考える。時にパッチワークのようになるが、それだと、結果的にインパクトの強いものはできないだろう。

それが、中途半端に「みんなで考えましょう」になって、ぬるいワークショップが広まっている。そろそろ、「それ、何も決まらないっすよ」と言ってあげる時期なんだろう。

ポストイットに罪はない。ただ、企画を決めるのに民主的な発想は、根本的に合わないものだと思うんだよね。