社内の風景は会社によって、結構ちがう。
そして、会議室の雰囲気は、まさに風土を表していると思う。一番わかりやすいのは「壁」じゃないだろうか。
広告会社は、僕が入社した30年前から(と書いて今年で卒業30年であることに初めて気づいて驚いた)、壁は「使うもの」だった。
とにかく、何かを貼る。企画だったり、切抜きだったり、壁はキャンバスみたいなのものだった。
つまり「みんなでワイワイ考える」ことが、はなから当たり前だったのだ。
そういう雰囲気は、まだ他の業種では少なかったけど、段々と当たり前になった。コピー機付きのホワイトボードなどが広まった。六本木ヒルズができた時に、たしか壁面をボードにしたような部屋があったと思う。
そして、いろんなところで「ポストイット」が普及した。小さいものを栞にするのではなく、大きめのものに書き込んで持ち寄り、分類していく。いわゆるワークショップの技法も一般的になったが、この普及には広告業界の関係者も相当関わっている。
ことに地方自治体などにも持ち込んだようで、「村おこしの会議に集まった青年団」とかのニュースを見ても、ポストイットがペタペタだ。それが「民主的」だと布教をした人がいたのである。
ただし、最近は相当副作用が強いんじゃないだろうか。
僕も、研修やワークショップの仕事では、このようなペタペタを取り入れることがあるけれど、「環境分析」までで止めることを原則にしている。将来については、シナリオ上で「あり得ること」ならば書いてもいいだろう。
ただし、やってはいけないのは「アイデア」を思いつきでペタペタすることだ。そういうワークショップをやると、参加者の満足度は上がる。ただし、アイデアが匿名になり、それをつぎはぎして、玉虫色のアウトプットになる可能性が高い。
結局は、だれも責任をとらない話になりやすいわけだ。
そうしたワークショップの成果をを見せてもらうことがあるが、その後に全く進んでいないことが結構多い。つまり、みんながちょっとずつ満足するガス抜きになっているのである。
広告会社の企画会議は、手ぶら禁止の持ち寄りだった。(たぶん今でもそのはず)
だから、ペタペタ貼っても、それはトーナメント大会で、また個人作業でアイデアを考える。時にパッチワークのようになるが、それだと、結果的にインパクトの強いものはできないだろう。
それが、中途半端に「みんなで考えましょう」になって、ぬるいワークショップが広まっている。そろそろ、「それ、何も決まらないっすよ」と言ってあげる時期なんだろう。
ポストイットに罪はない。ただ、企画を決めるのに民主的な発想は、根本的に合わないものだと思うんだよね。