今年の初めに、このブログでこんなタイトルのエントリーを書いた。
たとえば嵐とAKBなどを例に出して、メディアの上では「仲がいい男子」と「戦う女子」がもてはやされる、というお話だ。
この傾向、このオリンピックでもその文脈は健在だった。というより強化されてる。
「仲良し男子」については、先日も書いたとおり。で、気になるのは「戦う」どころか、もはや「昭和のスポ根」を地でいく女子の頑張りだ。
レスリングの吉田を中心とした人間模様、ウェイトリフティングの三宅の父子鷹物語、シンクロの鬼コーチと復活劇。男子よりも、汗と涙の密度が妙に濃い。
そして、こうした事実を受け手が望む方向に合わせて、またメディアも演出する。つまり送り手と受け手の共同作業だと思う。
じゃあ、誰が女子アスリートに、スポ根劇を望んだのか?まあ、中高年男性だろう。
閉会式の夜、近所の小さな店で食事をしていたら、こんな会話があった。常連客の一人客同士とマスターが話している。まず若い女性客に向かって
マスター「あのリレー、いい男ばかりが4人も走って最高でしょ?」
女性客「そうですよね~」
と、ここで隣の中年男性が割り込んだ。
「あのね、あんなバトンの練習するのは日本だけなんだよ……だからたまたま……」
おお!ここにいたのか昭和の残党、と思わず内心で大笑いしてしまった。この男性客にとって、あの四銃士はあまりに爽やかさ過ぎて、きっと素直に感動できないのだろう。げに恐ろしきは男の嫉妬。
ここから先は勝手な推測だけど、彼はきっとレスリング女子には思い入れがあったんじゃないかと。だから、そういう中年男の空気が伝染して、吉田沙保里の決勝戦は、あんな浪花節になったんだと思う。
日本テレビの河村アナが、吉田の亡父の話題をやたらと出しながら、妙な実況をしてしまったわけだが、それは脈々と流れる昭和スポ根が噴出してしまったのだろう。
日本テレビといえば「巨人の星」というスポ根総本山を制作した局だし、古くは力道山から、近年なら正月の箱根駅伝まで「スポーツを感動ドラマ化する」ことが大好きだ。
ただ、スポーツの現場はどんどん先を行っている。
まあ、それじゃ満足できない人のために、これからも無理やりドラマをこしらえていくのは、日テレだけじゃないと思うけど、それも限界は来ている。
そういえば、一大感動大会の24時間テレビも今年は大騒動になっている。
考えてみれば、ネットであらゆる情報が出回って、テレビは4K。そういうメディア環境で、昔のような感動をつくり出すのは難しい。
曲がり角っていうのは、気づいたら相当角を回っていることが多いんだよね。