子どもの頃、夏休みになると周りの友達が「いなかに帰る」という。
ところが、この意味がよくわからなかった。僕は父の祖父母と同居していて、両親ともに東京出身である。一体「いなか」ってどこなんだろうか?というのがピンと来なかったのである。
妻の出身地は東京ではないのだが、夏は結構暑い。一度夏に行ったが、皆で部屋でメシ食うくらいしかすることもなく、帰省は他の季節になった。
というわけで、盆の頃は東京にいる。
ただ、それだけだと芸もないので都内か横浜のホテルに泊ったりしてみたんだけど、これが結構楽しい。会社を辞めた頃から続けているので、10年以上になる。
何をするかというと、まあ大体は読書だ。
印象的なのが、2005年の夏のこと。行きがけの書店で買ったのは佐野眞一の「阿片王」だった。第二次大戦時の満州の闇を描いたドキュメントだったが、部屋から見えるのは首相官邸と議事堂だ。しかも郵政解散で、永田町はガラガラ。8月15日に霞が関界隈は半旗だった。
泊まったのは今はなきキャピタル東急だった。というか、今も同じ名前で同じ場所にあるけど、名前以外は全く違うホテルになって、泊まったことはない。
建て替えで相当価格が上がったホテルもあるけれど、この時期の都心のホテルは結構安めに出てくる部屋もある。いまからでも、結構見つかるんじゃないかな。最近は外国人観光客も多いが、お盆の頃はそれほどでもない。
選ぶポイントはいくつかあるけれど、一つは眺望。部屋に長々いるので、圧迫感のある部屋は疲れる。上層階じゃなくても視界は広い方がいいだろう。
また、この季節は複合施設や駅に直結している方がいい。理由は単純で、ちょっとランチするのにも、外は暑いから。朝食なしのプランで、近くに食べに行くにしても便利だ。有名な再開発エリアの外資系ホテルの価格設定は強気だが、「地下続き」で探してみると意外な穴場もある。
部屋でごろごろして、ランチ食べに行って、カフェでお茶しながら本を読んで、夕暮れとともに街へ出てふらりと店に入る。お盆でも店は見つかるし、十分に楽しい。
舞台公演などはさすがに少ないが、お盆や正月でも変わらないのが、寄席に歌舞伎に宝塚だ。後の2つはチケットが取りにくいが、寄席はふらりと行ってもどうにかなる。お盆の昼席を冷やかしてから、浅草でビールを飲むのも気持ちいい。
歌舞伎の8月公演は、軽めでコミカルなものもあるので、これもまた贅沢だ。
というわけで、帰省のあてもないなら、ぜひぜひ「大人の夏合宿」をお薦めしたい。混んでいる観光地よりも、ぜんぜんコストパフォーマンスもいいし。通勤先ではない東京って、相当面白いはずだから。
なお、明日から夏休みに入るのでしばらくブログはお休みします。再開は8月15日の予定です。