別に40歳になってなくても構わないのだけれど、葉書を書くことに関心を持つのはちょうどその頃じゃないかとも思う。僕はその年で会社を辞めたこともあり、何となく手紙や葉書を書く機会も増えた。
もともと字を書くことが好きだったこともあるが、コミュニケーションのテンポやリズムを意図的に変えたくなるのかもしれない。
よくわからないけど、ちょっといいモノがほしいと思って鳩居堂の便箋や葉書を手元に置くようになった。詳しい人であれば、日本橋のあの店や、京都のあちらの老舗が、といろいろあることは承知している。
ただ、そこまで凝るつもりはないし、店舗の多い鳩居堂は何かと便利だ。絵葉書などをネットで買おうとすると、単価が安い割に送料が高く、その上好きなものが選びにくいので、店で買うことになるのである。
ふと、思ったのは「とらや」に似ているなと。
あまりにも有名になったので、通の方はいろいろと他の店の品を挙げることもあるようだが、口に運ぶたびに感心する。「ああ、やっぱり」という感覚だろうか。
というわけで、鳩居堂の品は手元に置いているのだけれど、絵葉書が多彩で美しい。モチーフは、圧倒的に季節の草花だ。
ただし、困ったことがある。それは、買った後で「その花が何だかわからない」ということが、ままあるのだ。
紫陽花や、向日葵、あるいは椿などなら、季節も含めてすぐわかる。ただ、買ったはいいものの、いつ出せばいいのかわからないことも結構あったりするのだ。なんか情けないんだけど、知らないものはどうしようもない。
そんな折に知ったのが、「鳩居堂のはがき花暦」という本だ。もう、こういものを手元に置く時点で隠居モード全開なのだが、おかげで草花で迷うことはない。
手元に会った謎の実の絵柄も「オリーブ」だと知った。和の色調だったので、これには相当意表を突かれたが、ちょうど今が季節となる。
というわけで、暑中見舞いを前に、絵葉書に関心のある人にはお勧めしたい一冊だ。
なお、一部の図柄には吉沢久子さんによる文が綴られいてるが、これは少々好みが分かれるかもしれない。なんといっても大正七年生まれの方である。
このあたり、若手作家の競作にすれば、結構面白い企画になると思うのだが。