「板挟みの宮仕え」の笑いが炸裂。志の輔「メルシー!おもてなし」
(2016年6月19日)

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merci_omoteパルコ・プロデュース公演 「メルシー!おもてなし」~志の輔らくごMIX~

2016年6月17日(金) パルコ劇場

原作:立川志の輔 「踊るファックス」「ディアファミリー」「ガラガラ」「メルシーひな祭り」

脚本・演出: G2

出演: 中井貴一 勝村政信 音尾琢真 YOU 阿南健治 明星真由美 サヘル・ローズ 陰山 泰 関 秀人 有川マコト 高橋珠美子 高橋克明

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「ああ、パルコ劇場も閉めるので、最後に志の輔師匠がやるんだな」と半ば早合点してエントリーしてから、芝居だったことに気づいたのだが、もちろん問題なし!もとが面白い作品ばかりで、達者な役者が演じるのだからつまらないはずがないわけだ。

ストーリーは4つの新作落語を絡めているのだが、メインになるのは「メルシーひな祭り」だ。フランス特使夫人と娘が、とある地方商店街の雛人形職人の技に感動して、いきなりやってくることになる。

迎える商店街会長が中井貴一で、まあ細かい話を書くのは野暮だろう。笑いが止まらない、怒涛の2時間だ。

志の輔の新作は、相当の傑作ぞろいだが、けっこう顕著な特徴がある。それは、主人公が「板挟みの宮仕え」が多いのだ。

「歓喜の歌」などが典型的で、これはとある公民館で起きたダブルブッキングを巡る騒動で、会館の主任が翻弄される。やがて、どうにかしようと奔走するのは黒澤明へのオマージュではないと思うが、映画化もされた傑作だ。

「大河への道~伊能忠敬物語」も役所の職員が主人公だし、「みどりの窓口」は鉄道職員が振り回される話だ。「買い物ヴギ」は、妙な客に困らされるドラッグストアの店員だし。

今回の中井貴一も薬局店主だが「会長」ということで板挟みだし、そうなると外務省職員を演じる音尾琢真がもう一人の主役だ。板挟みの2人の、パニック脱出劇なのだ。

志の輔のはストーリー作りも、散らされるギャグも、それ程に毒が強いわけではない。ただ、ぬるい笑いかと言えばそうでもない。

配合や扱いを間違えれば猛毒になりかねないような、鋭い視点で作られた話を、摂取しやすいように上手に仕上げているのだと思う。

だから、大笑いした後の帰り道で、みなそれぞれに「身につまされる」思いをする。そんな「軽やかなブラック」だから、また中毒になってしまうのだろう。

そして、志の輔師匠の噺や舞台の後では、日本で暮らす幸福感がなぜか高まる。それは、妙なナショナリズムでなく、「正しい楽観主義」があるからだと思っている。

書いてるうちに、また見たくなってきた。