というわけで、まずはCMを見てもらいましょう。
(サントリーBOSSのCM【プレミアム対談編】 タモリがジョーンズと“いいとも風”)
長寿番組だった「笑っていいとも!」の設定で、タモリが「宇宙人」をゲストに迎える設定です。
では、もう1つ。今度はペプシの「桃太郎」です
(ペプシネックス ゼロ『桃太郎「Episode.ZERO」』篇 小栗旬 )
さて、タモリの番組に宇宙人は出てこないし、そもそもトミー・リー・ジョーンズは米国の俳優です。小栗旬は桃太郎じゃないし、そもそも桃太郎はいないし、ペプシとは関係ありません。
嘘と言えばウソです。ただし、こういうCMで「嘘つくな」とクレームが入ってはいないでしょう。CMで効能を偽ったりすれば問題になるし、ケースによっては法令に触れます。その一方で、あらためて考えると、私たちはメディアの中の「嘘」であることをたくさん知っているし、許容してます。でも、子どもの頃は、その辺が曖昧だったはずです。
3歳の頃に男子だったら「戦隊もの」の番組見てたでしょ?女子は?(セーラームーン、という答え)で、男子は戦隊の一員になれると思ってた?そんなことはない?
いまだったらそう言うだろうけど、ベルトだの兵器だの買ってもらって喜んでたでしょ?だとしたら結構本気だったかもよ?そのころは。
じゃあ、サンタクロースは?小学校入る前に見切っていた人は…1人だけか。ほら、結構虚構と現実を区別するにはそれなりに時間がかかるんだよ。
で、サンタクロースは「何を通じて」知ったかな?お父さんやお母さんが絵にかいてくれたかな?
そう、絵本やアニメなど「メディア」を通じて知ってたわけです。それをご家族が後押しして、教えてくれる。だから信じたんだよね。メディアに書いてある、ということはその真実性を補強します。そして、親もそういうし、友達もそう思ってる。
これが前回説明した、「社会的現実」だったわけです。
そして、知識が増えることで、その人にとっての社会的現実は変化します。
知識が集積されれば、メディアへの読解力が上がっていく。それによって、コンテンツも変わっていきます。つまり、受け手の知識と読解力が、メディアとコンテンツのあり方を規定していきます。
「この戦いが終わったら結婚しよう」
本来は感動的なはずのこんなセリフも、いまでは「死亡フラグ」と言われちゃうわけです。
したがって、時代によって、またエリアによっても変化していきます。BOSSやペプシのCMは現代の日本だから成立しているわけで、グローバルに通用するコミュニケーションではないですよね。「笑っていいとも」も桃太郎も。
では、ここで岡崎体育の「Music Vido」という作品を見てもらいましょう。見たことある人は?…2人くらいか。では、見てください。
まあ、よくできてるよね。単に揶揄してるだけじゃなくて、音楽や映像への愛を感じるから結構好きなんだけど、これだって一般的な「ミュージックビデオ」についての知識がなければ面白くもなんともないでしょ。
つまり、こうした「自己言及的」な表現が成立する時代のなかで、メディアとコンテンツのあり方も変化していくわけです。
【2016年4月26日青山学院大学経営学部マーケティング学科の講義より】