昨日(4/24)のNHKスペシャルは「若冲」だった。
上野の展覧会も期間が短く、いつ行けば比較的空いているのかと算段していたくらいなので、この番組が混雑に拍車をかけるのだろうなぁと思いながら見始めたら妙な違和感がある。
ナレーションだ。女優の小松菜奈を起用しているが、どうしても気になる。先に言っておくと、彼女が飛びぬけて下手というわけでもない。ちょっと突き放した覚束ない感じだけれど「ドキュメント72時間」などだったらテーマによっては映えると思う。要するにキャスティングのミスだ。そういう意味では、ちょっと気の毒である。
画家の未知の世界に迫ろうとするあまりか、語りには妙な切迫感がある一方で、時折語尾に不要なアクセントがつく。「超高精細」ということばが「チョウ・高精細」のように聞こえてしまう。
イチゴのソースをパンケーキにかければおいしいかもしれないが、炊き立ての上質な白米にかければどうなるか。殆どの人が、「ちょっと待てよ」と思うだろう。
この場合、ソースに罪はない。調理人が無能だという話になる。
いろいろな批判もあるけれど、僕はNHKの制作能力は一頭地を抜けていると思う。カテゴリーを問わず、対象やテーマを丁寧に扱っている。
最近ETVで「ねこねこ日本史」のアニメをやっているけれど、この10分足らずの番組だって丁寧だ。原作の、いい意味での「くだらなさ」をきちんとアニメにしている。
で、若冲というテーマはそれ自体がご馳走である。まさに上質の白米なのだから、じゃあシンプルに漬物かちりめんじゃこくらいでいいだろう。
つまり、このナレーションは俳優を起用すること自体がいい選択とは思えない。新「クロ現」で誇ったアナウンサー陣だっているはずじゃないのかな。
まあ、一番組のナレーションにこだわり過ぎることもないと思うが、なんでこんなことを書くかというと「NHKスペシャル」は同局を代表する番組、いわば「看板商品」だからだ。
トヨタでいえばプリウス、いやレクサスという感じかな。洋酒なら「竹鶴」とか「山崎」だろう。そして、危うくなった企業を見ると看板商品が危うかったり、存在感がなかったりする。
三菱自動車や東芝を思い起こせばすぐにわかるはずだ。
つまり、NHKスペシャルに危うい感じが漂うということは、組織のどこかで何かが緩んでいるのでは?と思うわけだ。
経営者がどうこう言われても、NHKの現場は十分に意欲的だと思っている。災害報道などを通じて、あらためてそう感じている。だからこそ、看板番組には神経質になる。
しかし、この番組で展覧会は大変なことになってしまうだろう。さて、いつ行こうか。