温泉と絶品の釜揚げうどん。上州下仁田の「芹の湯」
(2016年4月11日)

カテゴリ:遊んでみた,食べてみた
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IMG_1534所用があって、日曜から軽井沢に1人で行った。

今朝は昼前に出立して、時間のゆとりもあるので高速道路には乗らず、和美峠を下る。国道254号線、つまり川越街道から下仁田に抜けていくルートへ出て、その後は東に向かい高速に入ろうと思った。

途中で適当に昼飯でも食おうかという算段だ。

高速が開通してから、18号も254号も沿線の店は廃れている。「ドライブイン」は廃墟となり、コンビエンスストアや「セレモニーホール」、つまり葬祭所になっていたりする。時代の変化と言えばそれまでだが、空き地のままになっていないエリアはまだましで、痛々しい廃墟も多い。

南に下って国道に出る前に妙な看板がある。「芹生」と書いてあるが“釜揚げうどん”を出す店らしい。ただ、同じようなところに「芹の湯」という場所もあるようだ。裏道を走ると、ログハウスというにはややくたびれた建物がある。

さてどうしようか、とネットを見ようと思ったら圏外だ。まあ、中に入ってみることにした。ちなみに、後で調べたらウェブサイトはこちらにあった。

温泉は500円で、食事だけでもいいという。折角なので、まずは湯に入ることにした。ぬるりとした感じで、すぐに体が温まる。ちょうど先客の方が出る頃だったので、1人でゆったりと浸かる。

いったい誰がいるのだろうか、と食事処を見ると結構賑わっている。隅っこに積んである座布団を持ってきて、釜揚げうどんIMG_1539を注文した。

程なくして、ガスコンロと大きな釜が出てきた。カセットではなく、栓につないで点火する。そして、うどんと薬味とつゆが置かれた。

うどんは手打ちで、初々しい。大盛りのネギと細切りの柚子が薬味だ。

湯が沸いたらうどんを入れて15分ほどで食べごろになる。まずうどんと薬味を椀に入れてから、つゆをかけるようにと言われた。段々と湯が混じってくるので、そこで足しながら食べるとちょうどいい塩梅になるという。

周りをみると、高齢の女性が4人で寄せ鍋を突きながら生ビールや酎ハイを飲んでいる。その向こうは、3人組がモツで宴会。

右隣では中年の女性とその母と思しき女性がソースカツ重を食べていたが、やがて二人ともウトウトし始めて横になって寝てしまった。左隣では相当な齢と思われる老婆が立派な焼き魚を突いていたが、残した分をプラスチックのパックに入れてウトウトし始めた。

IMG_1542つまり、両脇の客が寝ている中で、湯を沸かしてうどんを茹でることになった。。

そして宴会は続き、寄せ鍋を食べた4人組は焼きそばとイカフライを注文する。4月の月曜日の、12時過ぎに群馬の山中ではこんな光景が繰り広げらているのだが、なんか「夢に出てくる風景」のような趣だ。

注文から鍋のセットまで10分ほど、湯が沸くまで10分、面が茹で上がるまでさらに15分。

茹ったうどんに薬味を乗せて、つゆをかける。麦のうまみが素朴に口の中に広まり、ネギと柚子の香りがジンワリと響いてくる。べつにあちらこちらのうどんを食べ歩いたわけではないが、こんなうどんは早々食べられないだろう。

途中で気付いたのだが、僕はこの店に来たことがある。妻と一緒でおそらく20年ほど前だと思うが、店の方と話をしていて気づいた。それ以来走る機会も少なかったが、同じようなことをしているものだ。

食べ終わって、勘定する頃には注文から1時間近くが経っていた。こんな謎の世界があるんだけど、軽井沢から南へ30分足らず。電波も入らないので人理で行くなら紙の本を持っていた方がいいかもしれない。

クルマで一人旅をする時に大切なのは、「予定を入れない」ことだと思う。電車で「連れて行かれる」のも楽しいけれど、フラフラした道中を楽しむのはクルマしかない。それは、歩いて旅した時代の感覚にも近いのかもしれない。

それにしても、日本は深く、というか群馬がすごいのか。

ちなみに峠道で幾度となく見た山桜はいずれも美しくカーブの先に青空を背景に登場するときには思わず息をのむ。桜も野生の花、という当たり前のことを痛感するのだ。IMG_1532