今回の京都行は、ミホミュージアムの限定公開期間に合わせたこともあり、その後から寺社を選ぶことになった。折角なので、冬の特別公開に合わせて、土曜には大徳寺から妙心寺へ行くことにした。
どちらも臨済宗の立派な寺ではあるものの、観光地としてはそれ程に込み合っているようでもないし、ガイドなどにもあまり詳しく載っていない。ここしばらくは京都に行ってなかったのだが、近年は訪日観光客の増加でごった返しているということもあり、静かなコースを選ぶにはちょうどいいようにも思ったのだ。
大徳寺は北大路にほぼ面したような位置にある。千利休にまつわる逸話や、一休さんなどにも縁がある寺で、20を超える塔頭があるが常時公開されているのは少ない。
朝ということもあって、人影も少ないが、まず聚光院から入る。こちらは創建450年の特別公開ということで、まずは狩野永徳と父・松栄による本堂障壁画である。
ある程度予想はしていたものの、この旅の「狩野派お腹いっぱい」の第一弾。しかも、いきなりのメインディッシュという感じである。かつてパリのルーブルからモナリザが来日した時の返礼としてフランスで展示されたという作品だ。
「瀟湘八景」「竹虎遊園」「琴棋書画」など有名なモチーフの作品群であり、障壁画のエッセンスが凝縮されている。
庭から裏手に回ると「閑隠席」「升床席」の2つの茶室があり、書院には千住博による襖絵がある。明るめの群青で滝をモチーフにした障壁画で、2013年に完成した作品の初公開ということで、ある意味これがもっとも驚きでもあったし、別の意味で稀少性があるともいえるだろう。
続いての芳春閣は、前田利家の妻松子(まつ)による建立。庭は大好きな桔梗を植えていたそうだが、開花時期以外は草が伸び放題になることもあり、現在は枯山水になっていて、中井金作氏の設計になるという。
ここでの見どころは裏手に回ったところの「呑湖閣」と庭園だろう。二重楼閣で、比叡山を借景にして琵琶湖の水を「呑む」ということからの命名という。庭園内には近衛文麿が下宿した書院もある。
さらに、本坊をまわって、早目の昼に。あてもなく歩いていたら和食の店があったので入ってみる。
まだ早く、他に客もいないためご主人と世間話になり、この界隈の案内へ。
この辺りには「蓮台」という地名があるのだが、どうも名前からしていろいろな人が葬られたようだという。刑場も近いし、洛中では始末に負えなかったのだろうし、近くは「骨塚」という地名もあるらしい。つまり、京はそうした戦乱の血が流れた土地でもあると語られる。
その他にも、鳥羽やら賀茂やらという話をされた後に、「それでですね……そういう辺りは」と、間を空けて一言。
「どこも、おいしい野菜が採れるんですなぁ……」
「あ、ああ~」
「ハハハハハ」
「ハ、ハ、ハハハハハ」
いや、京都はさすがに奥が深い。