2016年03月アーカイブ

schp夢幻能《月に憑かれたピエロ》というタイトルを見て、「おお!」と思うか、「なんだそりゃ」と思うか。僕は前者だったからすぐにチケットをとって行ったんだけれど、似たような人は結構いるようで東京文化会館の小ホールは満員だった。3月24日19時の開演で、ソプラノは中島彰子。この企画自体は既に何度かおこなわれているようで、演出も彼女の手になるもののようだ。

能管から始まるが、その後いったん静寂の中からシェーンベルクとなる。笛の他も大鼓・小鼓に、地謡が加わるが、音楽的に両者は交わらない。ごく一部、シェーンベルクの演奏中に能管が重なるところがあったようだが、基本は、曲間に能が演じられて、奏されるつくりになっている。

段々と一体感が出てきて、二幕の最後などは夜叉の姿のシテとピエロが舞台上で交錯して、中島が「Kreuze!(十字架)」と叫びながらか客席に走り降りて、静寂から次につながるという構成だ。

想像以上に違和感のない構成で、音楽と舞は十分に楽しめた。アンサンブルの質も高く、チェロの柔らかさや、クラリネットの鋭さを包み込む小ホールは素晴らしい。

賛否が分かれると思われるのは、舞台スクリーンに映され続けられるムービーだろう。字幕が出るのだが、対訳ではないので中途半端な感じを受けるし、いきなり「月」そのものが映されるなど、少々「絵解き」の演出も多い。

アート畑のプロだったら、少々苛つきながら見るのではないかと思う。ただし、何もないというのも、抽象的に過ぎるのではないだろうか。 >> 夢幻能「月に憑かれたピエロ」から「名取ノ老女」へ~東京の舞台よりの続きを読む